災害時等に活躍するテクノロジーのひとつに「ロボット」があります。本メディアでもこれまでに、ヘビ型巨大ロボットや空飛ぶ消火ロボット、両手サイズのコミュニケーションロボットなど、様々なロボットを紹介してきました。
今回の記事では、所有者の見守りだけでなく避難所等の公共の場所で多くの人に役立つロボット「cinnamon(以下、シナモン)」を紹介します。
見守りロボット「cinnamon」
医療補助を目指した初の家庭用ロボット
ドーナッツロボティクス株式会社(本社:東京都港区、代表取締役:小野 泰助)が開発した「シナモン」は、高さ33cmの程よい存在感と可愛らしいフォルムのロボットです。
タッチ式の液晶パネルと車輪が付いており、スマホによる遠隔操作で本体を動かすことができます。
米グーグルのモバイルオペレーションシステム「Android」をベースに開発されており、「顔認証付きカメラ機能」「⾳声認識」「通信機能」が基本搭載されています。
これらの機能を使って、一般家庭向けには
- 自宅の防犯セキュリティ強化(音や動きにカメラが反応し、スマホへ通知)
- 高齢者や子ども、ペットの見守り(自宅の様子を映像で確認したり、ビデオ通話ができる)
- 家電のコントロール(音声認識で家電をリモコンなしで操作)
など、日頃の生活に役立つはたらきをします。
ここまではよくある“見守りロボット”と似ていますが、シナモンには「医療補助」の役割が想定されており、人の健康を見守る機能を備えているのが特徴です。
【健康を見守る機能の例】
- 日頃の安否管理(高齢者がシナモンと会話しない日が続けば家族に通知)
- 音声による健康チェック(声からストレス度合いを診断し、心身ストレスを早期発見)
- 会話による高齢者の痴呆防止(簡単な会話の受け答えができる)
- 血圧などの健康データ管理(特定の血圧計をかざすとシナモンへ自動でデータが転送される)
- お薬タイマー(時間を設定するとお知らせをして服薬し忘れを防げる)
特に「血圧などの健康データ管理」機能では、集めたデータを提携先の病院に送信し、自宅から遠隔診療が受けられるサービスの計画が進められています。
シナモンが被災地でできることとは?
災害時にシナモンは下記のように役立つことができます。
1. 被災した自宅内の確認、防犯
シナモンは電気があれば(基本はWi-Fi環境下)スマホから自由に動かせます。そのため、外出中に災害が起きた際に、自宅の被災状況を映像と音で細かく確認するのに便利です。
避難所にいる時、自宅へ空き巣が入らないか心配になる場合には防犯カメラの代わりとして使えます。
2. 安否を伝える連絡手段として
音声と動画によるメッセージを送受信できるため、家族へビデオメモを残して安否の連絡が可能です。災害時は電話やインターネットがつながりづらくなることが考えられるため、電話やメール、SNS以外の連絡手段を持っていると安心です。
3. 大勢の被災者の健康管理
避難所や自治体がシナモンを導入すれば、血圧など健康データ管理ができる機能を使い、避難所にいる多数の被災者の健康データを収集し、遠隔地の医師へ送信して「遠隔診療」を行ってもらう仕組みを構築できます。
また、医師とのビデオ通話による「24時間救急医療相談」の実施という使い方も考えられます。
被災者の身体と心の健康を守る
災害時には物理的な怪我はもちろん、慣れない避難所生活のストレスや、自宅の様子や大切な人の安否がわからないことなどの不安から、体だけでなく心の健康状態も悪化しやすくなります。
避難所では健康相談所が設けられたり、巡回診療などの保健活動が行われることがありますが、医者の常駐は難しいため、すぐに問題を解決できないこともあるでしょう。
シナモンは気になる自宅の確認や安否連絡、医師との健康相談の窓口として、被災者の心身の健康を守ることが期待できます。
「受付係」として、BtoBの領域ですでに活躍中!
「機能拡張」でより幅広い領域に貢献
実は、シナモンはこれまで紹介してきた基本機能のほかに、ニーズに応じて様々な機能を搭載可能です(機能拡張方スマートロボット)。
8カ国語の高度な翻訳機能(英語、中国語、韓国語、フランス語、インドネシア語、スペイン語、タイ語、ベトナム語)や商品紹介や広告コンテンツのディスプレイ表示などの機能を追加したシナモンが、企業や空港、公共施設の「受付係」としてすでに活用されています。
感染症対策で「省人化」が強く求められる空港や病院などの施設や人材不足に悩む企業において、高品質な接客業務ができるロボットは大変便利な存在です。
また、老人ホームや介護施設でも「プライバシーに配慮できる見守り」や「施設職員不足の対応や労力軽減」などを目的とした実証実験が行われています。
拡張できる機能は今後も増えていく可能性があります。
シナモンは家庭の見守りや防災だけでなく、さまざまな社会問題の解決にも貢献できるポテンシャルがありますね。
まとめ
ゆるやかな曲線を描くフォルムが可愛らしいシナモン。人が見て親近感を抱きやすく、感覚的に良い「黄金比」を各所に用いながら、人間をデフォルメしたデザインになっているそうです。
不安になりやすい災害時に、身体と心の健康を見守ってくれるロボットとして役立ってくれそうです。
参考:https://www.donutrobotics.com/、https://robocre.com/2022/03/17/taisuke_ono/、https://nocodedb.world/archives/2989