いざというとき迅速に動けるよう、一人ひとりが必要な手順を学び、意識を高められる防災訓練は、防災・減災の実現に必要不可欠です。しかしながら、令和以降、全国各地で防災訓練の開催数や参加者数が減っている現状もあります。新型コロナウイルス感染症が収まっていないため、防災訓練は”3密を助長する”と敬遠する人が増えたからです。

特に防災訓練への参加率減少が問題視されたのが「マンション」。横浜市のあるマンションでは、消防法で年数回の防災訓練の実施が義務づけられているものの、前年度と比べて半数以上、参加者が減るケースが現れていました。

こうした状況に対し、横浜市はマンション居住者全体の防災知識向上のために、企業と共同で「VR消防訓練サービス」の開発・導入に乗り出しました。

マンションで暮らす世帯が全員参加できる「VR消防訓練サービス」

大和ハウスグループの大和ライフネクスト株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:石崎順子、以下「大和ライフネクスト」)株式会社理経(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:猪坂 哲)は、横浜市と三者連携協定で行っていた「次世代型マンション防災コンテンツの共同研究開発」の成果として、マンション居住者様向け「VR消防訓練サービス」を発表しました。このサービスは2021年11月より、大和ライフネクストが管理を受託するマンション管理組合への提供が始まっています。

「VR消防訓練サービス」は、マンションでの緊急時の対応について知識や理解を深められるVR動画を用いて、以下の流れで行われます。

  1. マンション全世帯にQRコード付きの広報文を配付
  2. 居住者がQRコードを手持ちのスマートフォン等で読取り
  3. 動画サイトにアクセスし、VR消防訓練の動画を視聴
  4. 管理組合が、VR消防訓練の参加状況や視聴状況を確認

これまで行っていた集合型の訓練に代わり、VR動画の視聴が防災訓練への参加となる仕組みです。

このサービスには3つのメリットがあります。

①いつでも、どこでも、何度でも参加可能

VR動画はインターネット上で公開され、居住者がいつでもスマートフォン等から視聴できるようになっています。また、期間中は何度でも見返すことができます。

実はコロナ禍以前からも、マンションにおける防災訓練の参加率の低さは問題視されていました。訓練の実施日はマンション管理組合が決めるため、生活リズムや家庭の事情など様々な理由でスケジュールを合わせられない方がいたからです。

VR動画であれば、居住者は時間にとらわれず、それぞれの好きなタイミングで視聴できます。これにより、マンション全体の防災訓練の参加率向上が期待されています。

③消防法に則った訓練内容

VR動画は消防法で定められている「消火訓練」「避難訓練」「通報訓練」という三つの訓練について、横浜市消防局が監修した内容となっています。プロからの確かな情報で、信頼性は抜群です。

③マンション管理組合の負担軽減

防災訓練は実施したら終わりではありません。

大勢が住むマンションの中でどれだけの人が参加したか、次回につなげるため訓練の内容はどうか尋ねるアンケートなど、実施後に主催者(マンション管理組合)は情報を集めなければなりません。マンションの防災訓練では、参加人数が多くなればなるほど、そうした情報収集が負担になっていきます。

このサービスには居住者への案内から参加者集計、実施後アンケートまで、訓練開始〜実施後に必要な一連の作業もコンテンツに含まれており、主催者は手間をかけずに訓練の実施状況を把握できるようになります。参加率が増えても安心です。

実際にVR消防訓練に参加した方は

  • 試験的に開催したVR消防訓練で、横浜市のあるマンションでは、これまでの集合型消防訓練に比べて参加率がなんと5倍になったという結果が出たそうです。
  • 実際にVR消防訓練に参加された方からは、
    いつでも自分の好きなタイミングで視聴できるので便利だと感じた。
  • コロナ禍における新しい取り組みとしてとても良いと感じた。
  • 集合型の消防訓練だと開催日時限定の参加なので参加者が限られるが、VR消防訓練では参加者増が見込めるため、マンション管理組合全体の防災知識向上に効果的だと感じた。

という感想が寄せられました。(引用:プレスリリース)

まとめ

コロナ禍により、横浜市の自治会町内会等における令和2年度の避難誘導訓練の届出実績は、前年度と比較すると参加人員60%減という状況がありました(参考:令和2年年報 横浜市消防局)。今後は「VR」というテクノロジーを導入した訓練により、マンションでの防災訓練参加率の向上が期待できます。

新しいカタチの防災訓練。大勢の人が共同で生活するマンションでこそ活躍しそうですね。


画像の引用や参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000065.000025721.html