地震は揺れによる直接的な被害はもちろん二次災害に注意が必要です。みなさんは地震の二次災害で多い「電気火災」を知っていますか?そしてその対策を取ることができているでしょうか?

今回の記事では、地震で発生する電気火災についてと、防災アイテム「coco断」をご紹介します。

地震で起きる「電気火災」とは

阪神淡路大震災時の神戸市長田区・須磨区の住宅延焼の様子(引用|災害写真データベース)

過去の大震災で甚大な被害をもたらしてきた二次災害

地震といえば建物の倒壊を怖いと思ったり、海の近くに住んでいる場合、津波を危険視されていたりする方は多いのではないでしょうか。

しかし、地震に伴って起きる可能性が高い二次災害で、お住まいの環境に関わらず忘れてはいけないものがあります。

それは「火災」です。

阪神淡路大震災(1995年1月17日発生)や東日本大震災(2011年3月11日発生)では大規模な火災が発生し、甚大な被害をもたらしました。どちらの震災でも出火原因が明らかな火災のうち、半数以上が電気関係だったといいます。このような火災は「電気火災」と呼ばれています。

引用|内閣府防災情報のページ「大規模地震時の電気火災の発生抑制に関する検討会」報告書(2018年3月)

電気火災の具体的な出火要因は電熱器具や電気機器、電気配線、配線器具などで、大きく3つのパターンがあります。

  1. 電気系統の配線そのものや電気製品内部、タップへ差し込んだコンセントなどの接地に地震の揺れで負荷がかかり、断線・半断線を起こして電子回路が発熱、発火
  2. 電気系統の断線部やコンセントの接点などに水がかかり、漏電により発生した火花が周囲に引火
  3. 白熱灯や電気ヒーターなど熱を発するものが転倒し、接触した布製品などから出火

 

電気火災のうち60%を占める「通電火災」

電気火災が起きる主な状況については、下記の5つのケースが推定されています。

引用|内閣府防災情報のページ「大規模地震時の電気火災の発生抑制に関する検討会」報告書(平成30年3月)

ケース1、2、3は、揺れの影響で先ほどあげた3パターンのどれかを起こし発火する場合ですが、今回注目したいのはケース4、5です。

ケース4、5では地震発生とともに「停電」が発生しています。停電時は配線に電気が流れないため、電気機器が転倒・落下してしまっても、発熱や漏電による発火が起きる可能性は限りなく低くなります。

しかし、電気機器が発火のリスクを抱えた状態のまま停電が復旧した場合、電気の流れが再開した直後に発火することがあります。これを「通電火災」と言います。

通電火災の恐ろしさは、地震から時間が経過した後に発生することです。

例えば、

地震発生時に広域で停電が発生→揺れの影響で電熱器具が転倒→ブレーカーを落とさず住民が避難→電力復旧→転倒して家具や布団と接していた電熱器具に通電→発火

上記のような例では避難して人のいなくなった室内から出火するため、発見が遅れ、初期消火ができず被害が拡大する可能性が非常に高くなります。

阪神淡路大震災では原因が特定できた建物火災のうち、60%以上が通電火災だったと報告されています(参考:岩見・室崎「阪神淡路大震災における出火・炎症状況の事例調査」国立研究開発法人科学技術振興機構,1997)。

内閣府が公表した「大規模地震時の電気火災の発生抑制に関する検討会」報告書では、「阪神・淡路大震災以前には、このような電気火災の危険性が十分に認識されておらず、通電後の火災への対策の必要性が認識される契機となった」とまとめられています。

通電火災はどのようにすれば防げるのか

通電火災を防ぐ1番の方法は、地震が起きたらすぐにブレーカーを落とすことです。しかし急な地震でびっくりしたり、家が壊れそうなど一刻を争う状況では、ブレーカーまで気が回らないことも多いでしょう。

通電火災の備えには「感震ブレーカー」の導入が効果的です。

感震ブレーカーとは、一定以上の地震が起きた際に手動ではなく自動でブレーカーを落とす仕組みを持った機械で、

  • 内蔵型・後付型の分電盤タイプ(電気工事が必要)
  • コンセントタイプ(差込型は電気工事不要、埋込型は工事が必要)
  • 簡易タイプ(電気工事不要)

などの種類があります。

タイプ 特徴 価格
分電盤タイプ(内蔵型・後付型) ・ブレーカーに内蔵したり後付けをしたり、直接設置する
・揺れを感知すると疑似漏電信号を出力することで、分電盤の主幹ブレーカーに電源をオフさせる
・性能が高く、専門工事業者による設置のため作動の信頼性が高い
・通電遮断までに一定の待機時間があり、避難などの際に照明の確保ができる
約2〜8万円
コンセントタイプ ・電子センサーが揺れを感知して電気の供給を遮断
・コンセントに差し込むタイプと中に埋め込むタイプがある
・自分で設置しても作動の信頼性のばらつきが小さい
・特定の電気機器のみの電源を即時に遮断できる
約5千円〜2万円
簡易タイプ ・おもりが落下したり振り子が作動することで、重力やバネの力で即座にブレーカーを落とす補助器具
・ホームセンターや家電量販店でも手に入れられる
約3〜4千円

 

国は2014年から首都直下地震や南海トラフ地震などに備える計画の中で、住居への感震ブレーカーの普及を推進しています。自治体によっては感震ブレーカーの設置時に補助金が出るところもあります(※設置するタイプを限定している自治体もある。例:愛知県名古屋市は「原則、分電盤タイプのもの」が助成対象)。

使用している電気製品の数や導入の手間、価格面など、ご家庭によってそれぞれ感震ブレーカーの導入ハードルには大きな差があるでしょう。とはいえ、家に電気製品が一切ないというご家庭は多くないはずです。通電火災に備え、まずは比較的手軽に導入できる簡易タイプやコンセントタイプの感震ブレーカーを用意しておくと良いでしょう。

感震ブレーカー導入のひとつの選択肢として、2023年9月1日に発売開始が予定されているコンセントタイプの「coco断」をご紹介します。

設置が簡単な感震ブレーカー「coco断」

コンセントに差し込むだけで特定の電化製品のみ電気を遮断できる

「coco断」は三和商事株式会社(本社:千葉県市川市 代表:小林 正樹)と日本防災スキーム株式会社が共同開発した感震ブレーカーです。

coco断は振り子の原理を応用した特許技術により正確に揺れを感知して、震度5強以上の揺れで作動します。電子センサーなどを利用していないため、故障やメンテナンスの必要性が限りなく低いとされています。

設置方法はコンセントへの差込と粘着テープで固定するだけでよく、誰でも簡単に取り付けられます。

coco断には3口のコンセントタップがあり、ストーブやアイロンなど発熱・発火する可能性の高い家電のプラグを差し込んでおくと、いざという時にその家電のみ電気の流れを遮断して、停電復旧後にも通電させないようにすることができます。平常時には通常のコンセントタップとして使えます。

この「特定遮断」ができる感震ブレーカーのメリットは、深夜に大地震が起きた際に、ガラスなどの落下物を踏まないよう照明はそのままにしておけることです。

ブレーカーごと電源を落としてしまうと電気火災への備えにはなりますが、すべての電気機器への電力供給が止まるため、照明などスムーズに避難するのに役立つ器具も使えなくなってしまいます。

分電盤タイプの感震ブレーカーには、ブレーカーを落とした後に一定時間、照明などの電気を確保する機能を持つものもあります。しかし、分電盤タイプの感震ブレーカーは電気工事が必要で費用も高いため、導入しやすいとはなかなか言えないのが現状です。

その点、coco断のような特定遮断ができるものであれば費用もそれほど高くなく、緊急時にも役立つ機器の電源を確保したまま、通電火災の火元となるもののリスクを減らすことができます。

まとめ

感震ブレーカーの設置は急に電気が止まっても困らないための停電対策もあわせて取り組む必要があります。今回紹介したcoco断のように特定遮断ができるものだと、通電火災のリスクを減らしつつ、必要な電気器具まで電気を停めないので便利です。

もちろん、揺れにより強制的にすべての電気が遮断されることはありえます。普段から夜間時の急な停電に備えて、停電時に作動する足元灯や懐中電灯などの照明器具を備えておきましょう。ストーブなど発熱する機器の近くに可燃物を置かないことや、家具の転倒防止対策を行っておくことも大切です。

防災アイテムの導入には費用や手間はかかりますが、もしもの時に備えておくことで、命や大切なものを守ることができます。ご自身の状況に合わせて手が届きやすいものから、防災対策を始めてみると良いですね!

 

 



参考:https://e-sanwa.jp/corporate/cocodan,https://www.huffingtonpost.jp/entry/hanshinawaji-earthquake-bousai_jp_61df9179e4b0ae44b31b6cd1