日本は様々な災害リスクを抱えているが、気づけば起こっていたという類のものに土砂災害があるのではないだろうか。
津波のように高台から視認できるものではなく、知らぬ間に斜面が崩壊していき、土砂災害が起こった現場に遭遇した時に初めて知ることになる。
NECが、土砂に含まれる水分量から、土砂斜面の崩壊リスクの変化をリアルタイムに見える化する「土砂災害予兆検知システム」を製品化した。
世界初のデータ解析技術を駆使した「土砂災害予兆検知システム」
今まで自治体は、都道府県と気象庁が共同で発表する「土砂災害警戒情報」の他に、監視カメラや傾斜計、センサーなどのデータから判断し、避難勧告・指示を発令していた。しかしそれでは、前兆をとらえてから、発令して、実際に土砂斜面が崩壊するまで、残された時間はわずかとなってしまう。
日本気象協会の提供しているもののような予測システムは存在するが、詳細な地形データ情報や過去の災害状況の分析などが必要となり、導入に高額な費用がかかってしまっていた。
今回NECが世界で初めて開発したデータ解析技術は、土砂に含まれる水分量のみから、土砂災害予測に必要な、土砂の重量・粘着力・摩擦・土中の水圧という土砂状態を表す4種のパラメータを算出するというもの。これにより、斜面に設置するセンサーは土砂に含まれる水分量を測定するものだけとなり、リアルタイムで土砂の危険予測が可能となる。
この予測システムは、センサー、複数のセンサーの測定データをまとめてクラウドに送信する中継局、測定データを蓄積・解析するクラウドサービスの3つで構成されている。
低コストでのシステム導入
価格はセンサー3台、中継局1台、設計・設置工事費込みの参考価格で、1斜面あたり初期費用690万円(税別)、月額7万円から。販売目標は今後3年間で200システムとのことである。
センサー本体は電源工事が不要なバッテリー稼働であり、かつ省エネ設計により2年程度の長期間稼働が可能である。また通信に関しても免許申請が不要であるので、初期費用を抑えることができる。
導入後についても、データ蓄積・解析機能はクラウドサービスとして提供するので、システムを購入して抱え込むことなく運用が開始できる。個人消費についても言えるが、今は購入するのではなく、必要な時に必要なだけレンタルする時代。企業の資金の使い方も、そのようにシフトしてきている。
NECの防災システムとの連携でより迅速な意思決定を
テレビとレコーダーなど、デジタルものはメーカーを揃えると操作性が良くなったり、情報共有が簡単になったりする。今回の土砂災害予兆検知システムも、NECの防災情報システムとの連携が可能であり、土砂斜面の危険性や監視カメラ映像など各種データの総合管理が可能である。
また、2016年6月の発表当時、NECの土砂災害予兆検知システムとALSOKの24時間365日の監視サービスとの連携を検討しており、両社共同で実証実験を実施中とされていたが、遡って同年3月に発表された、NECとALSOKの協業に基づくものと思われる。私たちの安全を守ってくれる企業が、ICTの先端技術を持つ企業と連携することは素晴らしいことである。
様々なものを飲み込んでいく土砂災害。今のところ発生そのものを防ぐことは難しいかもしれないが、この先起こる未来を予測した時に十分避難する時間を確保できるような体制を、企業と自治体で整えて欲しい。そうしていつか、災害そのものを未然に防ぐことができるようになるかもしれない。