皆さんは「フェーズフリー(Phase Free)」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。フェーズフリーは、身のまわりにあるモノやサービスを、日常時はもちろん、非常時にも役立つようにデザインしようという考え方のことです。今回紹介するのは、そのフェーズフリーな視点から展開されているアパレル系ブランド・lond(ロンド)の防災バッグ「preplet 02」です。

いざという時に防災頭巾に変形するバッグ「preplet 02」

無駄のないデザインで、突然の災害時にもスムーズに対応

株式会社アベニール(東京都港区)の「preplet 02」バッグと防災頭巾の2通りに変形する画期的な防災アイテムです。

ボディバック型のpreplet02(引用:lond公式オンラインショップ

平常時は日々の服装に合わせやすいシンプルなバッグとして使用可能。ショルダーバッグやボディバッグ、ハンドバッグなど様々な持ち方でコーディネートを楽しめます。

フード型のpreplet02(引用:lond公式オンラインショップ

災害時はインナーバッグを取り出し外側の袋をかぶるだけで、落下物などから頭を守る防災頭巾として活用できます。インナーバッグの取り出しは簡単で、突然災害が起きた時にもすぐに備えられます。

いざという時にサッと防災頭巾&バッグに分割。避難所まで、頭も持ち物も守りぬく。(引用:lond公式オンラインショップ)

頭にかぶるフード中心部には厚さ1cmの低反発素材が入っています。とっさの状況に備えて周囲の音が聞こえるよう、サイドとなる部分には低反発素材は入っていません。

色展開は普段使いしやすいブラックとオリーブ、モカの3種類。リバーシブルになっており、災害時には目立つ色面を使うと、自分の居場所を知らせる目印になります。

火にも水にも強く、晴れの日も雨の日にも使えるパワフルな生地

バッグは縦26cm×横43cmの余裕ある造り(引用:lond公式オンラインショップ

アクリル系合成繊維を使用した難燃素材生地が使用されています。この生地は、万が一火に触れても炭化して自己消火するため燃え広がりにくく、火のトラブルから体を保護することに役立ちます。コーティングではなく素材自体が難燃性を持っているので、繰り返し洗濯しても難燃性能は維持されます。

さらに生地には撥水加工が施されており、水を吸い込みにくく、雨よけフードとしても活躍します。タウンユースにもアウトドアにも使い勝手が良さそうです。

防災グッズの注目ワード「フェーズフリー」

モノづくりのコンセプトが評価され、グッドデザイン賞を受賞

「preplet 02」は、毎年デザインが優れた物事に贈られる「グッドデザイン賞(2023)」を受賞。

バッグから頭巾に変換するプロセスがスムーズであること、そして、日常の中で無理なく防災頭巾を持ち歩けるフェーズフリーのコンセプトが評価されました。

「フェーズフリー」とは?

冒頭でも軽く説明しましたが、フェーズフリーについてより詳しく説明します。

フェーズフリーとは、平常時と非常時という社会全体の区切り(フェーズ)を取り払い、普段利用している商品やサービスが災害時にも有効活用できるという価値を表す考え方のことです。
2014年に防災分野の社会起業家である佐藤唯行氏によって初めて提唱されました。

引用:一般社団法人フェーズフリー協会

この考え方は以下の5原則に基づいた製品、サービスなどにより実現されます。

  1. 常活性:どのような状況においても利用できること
  2. 日常性:日常から使えること。日常の感性に合っていること
  3. 直感性:使い方、使用限界、利用限界が分かりやすいこと
  4. 触発性:気づき、意識、災害に対するイメージを生むこと
  5. 普及性:参加でき、広めたりできること

フェーズフリーでは「日常の延長線上が自然と備えになっている状態」が理想です。代表的なものとして、ふだん食べている食べ物や飲み物を少し多めに買っておき、古いものから順に消費しながら一定量を備蓄していく「食料品のローリングストック」があげられます。

フェーズフリーな視点で防災アイテムを選ぶ

地震や津波、火山噴火、台風や豪雨といったものは「危機(ハザード)」であり、災害そのものではありません。あくまでも外的要因であり、これに耐える力がない人や社会に被害が出たとき初めて“災害”となります。

つまり、災害とは誘因となる現象に加え、「個人や社会の脆弱性」が重なったときに起こるものだと言えます。

災害はいつ起きるか分からないため、日頃からの備えが大事であると多くの人が感じているのは事実です。とはいえ、移動時など日常のささいなシーンでも気を抜かずに防災グッズを持ち歩く、というのはなかなか難しいことでしょう。こうした備えの意識が低いシーンでは、災害に巻き込まれたり、被害が発生しやすくなります。

防災グッズは、普段は非常用持ち出し袋などに閉まっておき、災害が起きたら取り出して使うなど、非常時のみに役立つアイテムがほとんどです。しかし「何をそろえればいいのか分からない……」と悩んだまま放置してしまったり、時間の経過とともに防災意識が薄れてしまったりと、結局、日頃からの備えが社会に浸透しないまま繰り返す被災が相次いでいます。

こうした現状に対し、「preplet 02」は日常生活のさまざまなシーンに取り入れやすく、普段使いできる防災アイテムとして力を発揮します。

防災グッズを導入するときは、非常時に役立つ性能はもちろんですが、今回紹介した「preplet 02」のように、日常的に取り入れられるというフェーズフリーな視点を持って作られたものを選ぶ

のもひとつの手段です。いま自宅にあるもので災害時の備えとして使えるものはないか、役立てる使い方はあるか、といったことも考えてみると良いかもしれませんね。

まとめ

「preplet 02」を提供するアパレル系ブランド・londでは、防災頭巾・防災バッグ・防災服という3つの防災グッズが1つになった、着て逃げる防災コート「prepover(プレップオーバー)」も販売されています。こちらも合わせてチェックしてみてください。



参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000101681.html、