防災インフラを事業理念として掲げる株式会社シナジーアイ(本社:滋賀県草津市)が、2023年6月1日(木)に滋賀県甲賀市でトレーラーホテル「PB STAY 甲南」をオープンさせました。このホテルは「トレーラーハウス」を活用したもので、平時は市外から訪れるビジネスパーソンや観光客向けの宿泊施設として運営され、災害時には移動し、要配慮者の避難所として活用されるなど、「動く防災拠点」として機能します。

平時と災害時に活躍するトレーラーハウスのホテル「PB STAY 甲南」

ストレスフリーで快適に過ごせる!秘密基地のようなホテル

「PB STAY 甲南」は10台のトレーラーハウスを活用した宿泊施設です。

同じ敷地内にシングルルーム(12.88㎡)とダブルルーム(15.52㎡)の2種類のトレーラーハウスが、計10室並んでいます。部屋の鍵はキーナンバーロックになっており、チェックイン・チェックアウトは無人対応。利用者がスマホのQRコードをかざすだけで簡単に使えるようになっています。

トレーラーハウスは外からはコンテナや簡素なプレハブ小屋のように見えますが、実際に中に入るとその印象がガラリと変わります。

壁面は強度と防音性に優れたOSB合板でできており、プライバシーをしっかり確保。OSB合板ならではの大胆な木目がアウトドアライクな雰囲気を醸し出しています。まるで森の秘密基地に来たようなワクワク感がありますね!

トレーラーハウスには電気・ガス・水道が通っているので、普通のビジネスホテルと同じような間取りで快適に暮らせるのが魅力です。室内にはエアコンやテレビ、冷蔵庫、ミニキッチン、洗濯機、シャワーや浴槽などの生活家電がついています。無料WiFiもあるので、スマホやパソコンの持ち込みも問題ありません。

1泊の宿泊料金(※繁忙期によって異なる)は、

  • シングルルーム(1名)……5000円(税別)〜/人
  • ダブルルーム(2〜3名)……6,000円(税別)〜/人

とリーズナブル。一般向けには素泊まりプランと連泊プラン、長期滞在プランを展開しています。

周辺にはスーパーや飲食店が充実しており、無料駐車場もあります。新名神高速道路 「甲南IC」より車5分、JR草津線 「甲南駅」より徒歩18分/車4分と、交通の利便性も良さそうです。ビジネスや観光の拠点を探している人にはぴったりな施設ですね。

災害時には必要な人の「仮設避難所」になる

PB STAY 甲南は、普段はビジネスパーソンや観光客向けのホテルとして運営されます。

そして風水害や地震等の災害発生時には、トレーラーハウス販売代理店である株式会社ユーべストが甲賀市と締結した「災害時等におけるトレーラーハウスの提供に関する協定」に基づき、障害者や高齢者、妊婦ら配慮が必要な人が安心して避難できる仮設避難所として活用されます。

けん引して動かせる特性により、有事の際は被災地へ速やかに出動。現地では仮設住宅や診療所として活用され、地域の防災インフラとして被災者の安心と安全に貢献します。

ところでトレーラーハウスとは?

ここまでPB STAY 甲南について説明してきましたが、そもそもトレーラーハウスがどんなものか、みなさんはご存知でしょうか?

トレーラーハウスは簡単に説明すると「モビリティ性のある住まい」です。タイヤのついたフレームに住居が乗っており、けん引車で引っ張ることで、さまざまな場所へ移動させられます。

モビリティ性のある住まいと聞いて、「キャンピングカー」を思い浮かべた方もいるかもしれません。確かにキャンピングカーも、生活できる空間がありさまざまな場所へ移動させることができますが、キャンピングカーとトレーラーハウスでは移動方法などに大きな違いがあります。

キャンピングカーとの違いは?

キャンピングカーはタイヤとエンジンを持ち、“車”としての機動力が高く、公道を自走することができます。思いたったらすぐ移動できるので、キャンプや旅行など、頻繁に移動をしながら生活するのに向いています。

一方、トレーラーハウスはタイヤはあってもエンジンは搭載されていません。単体では移動させられず、動かすには別途けん引車が必要になります。そのため、トレーラーハウスは頻繁には移動させないことを前提として使われることがほとんどです。

移動方法の特徴に伴い、生活する場所にも違いが出てきます。

キャンピングカーの生活空間

キャンピングカーは運転席とエンジンルームを確保する必要性があるため、生活場所は車の後方スペースにコンパクトに収まるようなつくりになります。それゆえ、車体の種類によっては生活空間が非常に狭くなり、人によっては圧迫感からストレスを感じることがあるかもしれません。電気や水、ガスなどのライフラインは、ソーラーパネルを使って発電したり、タンクやボンベなどで必要な分を確保するようになっています。

トレーラーハウスの生活空間(引用:PB STAY公式インスタグラム)

トレーラーハウスは運転席やエンジンルームが要らない分、キャンピングカーよりも広々としたスペースを確保することができます。移動させても現地でしばらく滞在することを前提としているので、電気や水、ガスなどのライフラインは移動先の電力会社やガス会社、水道局から引き込めます。そのため、エアコンや冷蔵庫、浴槽、水洗トイレなど大きな生活家電を設置し、一般的な住宅の部屋とほぼ変わらない快適な環境を作ることもできるのです。

「応急仮設住宅」の“第3の選択肢”として

従来の応急仮設住宅の課題をトレーラーハウスが補完する

PB STAY 甲南に限らず、トレーラーハウスは災害時の「応急仮設住宅」の新たな選択肢として注目を集めており、近年、全国各地の自治体で導入が進められています。

応急仮設住宅とは、自宅が災害によって全壊したため、避難所が閉鎖されると行き場に困ってしまう被災者に、自治体が応急的に提供する住宅のことです。日常生活上特別な配慮が必要な高齢者等の方を入居させる目的でも提供される場合があります(「福祉仮設住宅」と呼ぶ)。

これまで応急仮設住宅は、

  • 空き地にプレハブなどを建設する「建設型応急仮設住宅」
  • 空き室となっている民間賃貸住宅を県が借り上げた「借上げ型応急住宅(みなし仮設住宅)」

の2種類で運営されてきました。

しかし、従来の応急仮設住宅には下記のような課題がありました。

○建設型応急仮設住宅

  • 被災地の近くに建てられるが、建設や撤去のコストが高い(概ね500万円〜)
  • 1ヶ月程度の工事期間が必要なので、被災者がすぐには入居できない

○借上げ型応急住宅

  • 空き家など既存の建物を使うので被災者はすぐに入居できるが、被災地の近くに住宅を確保できるとは限らず、そもそも利用できる建物がない場合もある
  • 退去時の原状回復や被災者が継続居住を希望した場合など、住宅所有者との調整が大変

トレーラーハウスにはこうした課題を解決できる可能性があります。

トレーラーハウスは平時からホテルなどの事業で活用しておくことで、いざという時に必要な場所に移動するだけで応急仮設住宅としての役割を果たします。建設型応急仮設住宅と比べてゼロからの工事が不要であり、時間と費用を抑えつつ被災者に暮らしの場を提供することができます。

また、基本的にけん引可能な場所であればどこにでも移動して設置できるので、被災地の近くに空き家がなく、借上げ型応急住宅を用意できない場合でも被災者をすぐに入居させられます。

2016年に発生した熊本地震で最も大きな被害をうけた熊本県上益城郡益城町が、日本で初めてトレーラーハウスを被災者の福祉避難所として導入しました。この取り組みにより、トレーラーハウスは従来の応急仮設住宅を補完する第3の選択肢として一躍注目を浴び、防災の拠点として活用されるようになってきているのです。

PB STAYは滋賀県を中心に今後も広がる見込み

今回シナジーアイが滋賀県にオープンしたPB STAY 甲南は、新名神高速道路の近くにあります。滋賀県には他にも名神高速道路・北陸自動車道といった主要な広域交通網があり、いざという時にトレーラーハウスを他地域に移動させやすい立地です。また、周辺地域と比べて地価が安価なので、トレーラーハウスの製造工場を建てるランニングコストも比較的抑えることができます。

このため、シナジーアイは今後、PB STAY 甲南を1号店として滋賀県内に7ヶ所トレーラーホテルを展開するとともに、トレーラーハウスの工場設立も予定しているとのこと。ゆくゆくは滋賀県でトレーラーハウスを製造・販売し、県内だけでなく全国への配送を見込んでいるそうです。

まとめ

平時は観光やビジネスをサポートするホテルとして、災害時には地域の防災インフラとして機能する、二つの役割を果たすトレーラーハウス。ほとんど一般住宅と変わらない暮らしが送れるというのは気になりますね。宿泊費用もリーズナブルなので、気になる方はぜひ一度泊まってみるのも良さそうです。

 

 



参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000120495.html、https://synergyi.co.jp/pbstay/、https://www.bousai.go.jp/taisaku/pdf/sumai/sumai_5.pdf