地震、火災、洪水……災害にはさまざまな種類があり、起こりうる困難も多種多様。そんななかで共通して必ず活躍するのが「あかり」です。停電時に視野を確保したり、遠方へ自分の居場所を知らせたり。なにより不安な状況下においては、暗闇ではなく「明るい」ということだけで、想像以上に人の心は落ちつくものです。

しかし、ある場面では逆に備えた「あかり」がストレスとなる状況も存在します。

今回紹介するのは、そんな「あかり」の備えをサポートする画期的なアイテムです。

懐中電灯の光をランタンに変える『 TOMORI AID』

TOMORI AID(トモリエイド)は段ボールでできた、組み立て式照明キット。

YUJI YANAGISAWA DESIGN合同会社(東京都渋谷区)により制作されました。

誰でも簡単に組み立てて使える防災グッズ

組み立てはとても簡単。本体を広げて接続パーツと反射板を差し込むだけでしっかりとした骨組みになります。

中心にLED懐中電灯を支柱のように入れ、カバーをかぶせれば完成です。サイズ(高さ H 160 mm 手持ち部分の径 φ30 mm)の合う懐中電灯であれば何でもランタンに変えられます。

本体と接続パーツは段ボールで、カバー・反射板はプラスチックで作られており、重さはたった50g程度。A4サイズにまで折りたためるため、避難の際に必要な荷物内で邪魔になりません。

防水スプレーをかけると、少々の雨なら本体が濡れてふやけることなく使用できます(1度ではなく2度かけ、断面部にもしっかりスプレーするのがオススメ)。

いつも飾っておきたくなるデザイン性◎

本体は和洋問わずインテリアとしても部屋の中に馴染むデザイン。

点灯してもしていなくても、日頃から違和感なく懐中電灯をそばにおけるのもポイントです。これなら、もしもの時に懐中電灯がどこに置いたか分からなくなってしまうこともありませんね。

「避難時に防災バッグに入れて持ち運べる携帯性」と「飾りたくなるデザイン性」を兼ね備えた画期的なアイデアのTOMORI AID。

都内のものづくり企業とデザイナーの協働で新たなビジネス創出を目指すマッチングコンペ「東京ビジネスデザインアワード」の2019年度優秀賞を受賞しています。

デザイナーの避難経験からうまれたプロダクト

この製品を開発したデザイナーさんは実際に災害に遭い、避難生活中に「あかりについて困った経験」が、発想の元になったといいます。

避難所でストレスになった「懐中電灯の光」

きっかけとなった災害は、2019年10月、伊豆半島から上陸した台風19号。

静岡県・関東甲信越・東北地方で大規模な河川氾濫や土砂災害が相次いで発生。多摩川や千曲川など複数の河川で堤防が決壊し、多数の住宅が全壊、半壊、浸水したり、一時は52万戸を超える大規模な停電が発生しました。

当時、デザイナーさんは防災バックを持って避難所へ移動。到着した避難所は隣の間隔がないほど人が密集しており、消灯時間を過ぎた夜中にトイレへ行く時は、足元を懐中電灯で照らしながら寝ている人たちの間をぬって歩いたそうです。

そのとき、寝ていた人たちは懐中電灯に照らされ、眩しくてイライラ。いくらデザイナーさんが起こさないよう気をはらっていても、直線的な懐中電灯の光は強すぎて、周りの人が気になるもとになってしまったのです。

避難所生活では、懐中電灯を使う人・使われる周りの人が、お互いさらにストレスをためてしまう状況があることを、デザイナーさんは目の当たりにしました。

その後、同じ年に起きた台風15号の停電時に、千葉県で「懐中電灯の上に水を入れたペットボトルを乗せることで光を散乱させ、ランタンのように利用する」という方法が広まっていたのを知り、

  • 懐中電灯の光は避難現場で周囲の人を眩しくさせてしまう
  • 同じあかりでも間接的な、やわらかいあかりが良い

というニーズが実際の現場にあることを再認識。

手持ちの懐中電灯の光を簡単に拡散させられる TOMORI AID のアイデアを生み出しました。

オンラインと店舗で販売中

2021年3月にクラウドファンディングで即座に成功をおさめ、2021年6月12日から

で一般販売をスタートしています。

値段は税込2,000円。
USB充電式のLED懐中電灯&充電ケーブルつきが税込2,800円、3個セットで税込8,400円です。

まとめ

前回の記事でも「災害時のあかり」の重要性に触れたように、あかりは災害時に役立つアイテムです。(前回の記事はこちらから

しかし多くの人があかりの備えとして用意する懐中電灯は、災害現場での移動や捜索、信号用に役立つものの、避難生活では人にストレスを与えてしまうこと。たくさんの人がいる避難所は、ランタンのようにやわらかなあかりが求められること。実際に現場を経験しなければ想像できないことですよね。

だからといって、懐中電灯とランタンを両方準備するのは、ただでさえ荷物を少なくしたい避難時に適していません。

持ち運びしやすく、懐中電灯をいつでもランタンに変えられるTOMORI AID は、災害現場と避難所生活で重宝しそうです。日常生活にもインテリアとして違和感のないデザインも好印象。ぜひご自身の防災グッズに取り入れてみてはいかがでしょうか。

 

 

参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000075857.html