近年は都市部を中心に、街のいたるところで監視カメラをみかけるようになりました。監視カメラは盗難や事故の瞬間を記録したり、犯罪抑止効果を目的とした防犯面だけでなく、防災面でも活躍しています。例えば、皆さんも大雨や台風の時には河川の様子、地震の時には揺れる街の様子といった映像をテレビで見たことがあるはずです。

過去には本体のハードディスクやメモリーカードなどに録画をし、後から人が録画媒体を取りに行って映像を確認をするタイプの監視カメラが多く使われていました。しかし近年は映像通信技術の進歩により、遠隔地から撮影方向を操作したり、リアルタイムで映像を見れるクラウド型のカメラが増えています。

このような監視カメラは災害発生時に現場の状況を被災リスクなしに把握できるため、効果的な避難行動や支援をするにあたって大きな助けとなります。しかしながら、防災用の監視カメラ(以下、防災カメラ)にはいくつかの課題もありました。

今回紹介するのは、そんな防災カメラの課題を解決するために作られた最新システムです。

災害時の情報収集に役立つ「防災カメラ」。その課題とは?

2011年に起きた東日本大震災では、ニュースやインターネットの動画配信サービスなど、さまざまなメディアで現場の映像が流れました。文字や言葉の情報ではないリアルタイムの動画は、その場にいない人にも災害現場の様子をはっきり伝えました。

技術の進歩で鮮明な動画をいつでもどこでも見れるようになったこともあり、災害時における映像情報の重要性、利便性は社会に再認識されています。

現在、国土交通省では河川や道路管理用に監視カメラを24,000台以上設置しており(参考:国土交通省「国土交通省におけるSociety 5.0への取り組み」2018年)、関係職員がリアルタイムに監視するほか、公式ホームページ上で公開し、一般の人が防災目的などで閲覧できるようにしています。

ところで、情報収集を意識した防災カメラはできるだけ広域が見渡せる高所に設置される場合がほとんどです。遠隔操作でレンズを動かすことが可能であれば、1台で多方向を撮影したり、ズームをして一定範囲の撮影もできます。

非常に便利であるものの、「カメラが今どの方面を見ているのか特定しづらい」「操作が複雑で目標地点の映像表示に時間がかかる」など、撮影はできても目的の情報を迅速に集めるのは難しいという操作上の課題もありました。これは、できるだけ速く正確な情報が求められる災害下において致命的です。

また、カメラの映像は無闇に外部へ流出できるものではないため、セキュリティの関係上インターネットへの接続をできるだけ避けたいという利用者のケースも存在しました。

このような防災カメラの課題解決に乗り出したのが、国内カメラメーカーの大手、キヤノン(Canon)グループのキヤノンマーケティングジャパン株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:足立 正親、以下、キヤノンMJ)とキヤノンITソリューションズ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:金澤 明、以下、キヤノンITS)です。

両社は、デジタル地図データを活用した地図サービスを主軸に様々な事業を展開するジオテクノロジーズ株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長 CEO:杉原 博茂、以下ジオテクノロジーズ)の業務用地図アプリケーション開発キット「MapFan SDK for Windows」と連携した「カメラ地図連携アプライアンス」を開発。2022年4月6日からサービスの提供を始めています。

防災カメラのコントロールを簡単に、すばやい情報収集をサポートする「カメラ地図連携アプライアンス」

このシステムは、キヤノンの開発ソフトウエアをインストールした機器を導入し、その機器に自前の遠隔操作ができる防災カメラ(監視カメラ管理ソフトウエア“XProtect”対応のPTZカメラ)を登録することで利用できるものです。ソフトウエアとハードウエアの一体型サービスなので、利用者の導入ストレスが軽減されています。

システムには3つの特長があります。

1.地図をクリックするだけの直感的操作

利用者が操作画面に表示される地図上の任意の地点を選択するだけで、設置場所から選択地点までの距離や高さをソフトウエアが自動で計算し、最適な映像を表示します。

2.カメラの撮影方角を地図上に表示

操作画面では現在の撮影方角が地図上で表示されます(上画像では左上に方位磁石のマークで表示されている)。カメラの移動やズームに応じて方角表示は自動的に変化するため、今カメラがどこを撮っているのか、常に把握することができます。

3.地図はオフラインで利用が可能

インターネットに接続せずオフラインで利用できます。安全性を保ちたいクローズドな環境でもシステムの導入が可能です。

自治体の防災への貢献が期待

「カメラ地図連携アプライアンス」は、高所防災カメラの操作システムとジオテクノロジーズの高精度かつ高鮮度な地図データが連携することで、これまで映像だけでは困難だった撮影位置の把握や遠隔操作を、視覚的・直感的にわかりやすくさせました。住所検索で詳細な撮影箇所指定もできるため、情報の正確性も格段に上がります。

特別な知識がなくても簡単に扱える「カメラ地図連携アプライアンス」は、市区町村の防災課や消防、公共インフラなどで利用中の高所カメラを担当者が制御するのに役立つと想定されています。

カメラは最大48台まで登録することができ(カメラ台数に応じて費用が発生)、録画や再生にも対応。小規模な自治体から大きな機関まで必要に応じた活用ができそうです(一般の方のお問い合わせも可能です)。

提供製品と同一のソフトウエアやアプリケーションが導入されたデモ用のノートパソコンを一定期間無償で貸し出すサービスも行っており、興味のある方は導入前に動作確認を行えます。

また、すでに映像管理ソフトウエア(XProtect)を利用中の場合は、クライアントオプションのみの追加購入で地図連携機能の利用が可能です。

カメラ地図連携アプライアンス タワー型サーバ
XProtect Express+
MapFan SDK for Windows
地図連携アプリケーション
カメラ地図連携アプライアンス
クライアントオプション
パソコン
XProtect Smart Client
MapFan SDK for Windows
地図連携アプリケーション
年間保守サポート
※初年度必須
問い合わせ・トラブル対応
※メールのみ

▲商品メニュー(引用:PR TIMES)

価格は使用者の要件によって変わるため、詳細はキヤノンへの問い合わせが必要とのこと。

まとめ

防災や減災において「すばやく正確な状況把握」は、その後の対応を判断するために極めて重要な要素のひとつです。

キヤノンはこの「カメラ地図連携アプライアンス」を通じて、災害時の正確な情報収集と意思決定の迅速化に貢献するとともにセキュアな環境を構築することで、国や地方自治体の防災活動を支援していくことを目指しているそうです。

 


参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000671.000001375.html