システム開発やMSPサービスを提供するビットスター株式会社(本社:北海道札幌市、代表取締役社長:前田章博)が、2022年4月1日に「ツナガル+」というスマートフォン用アプリと、自治体の危機管理者向け指定外避難所支援SaaS「ツナガル+管理者向けサービス」をリリースしました。すでに福岡市で導入・実用化されており、今後の広がりが期待されます。
減災のポイントは「自助・共助・公助」
みなさんは災害時の被害を最小限に抑えるためのキーワード、「自助」、「共助」、「公助」をご存知でしょうか?
自助とは “自らの避難や家族同士の助け合い”、共助は “隣近所など地域での助け合い”、そして公助は “警察や消防、自治体などの行政が行う対応や支援” のことです。
この3つのキーワードのうち、災害が起きたときに1番頼れるものはどれだと思いますか?
一見、警察や消防などの「公助」が頼りがいのあるもののように感じられますが、1995年に起きた阪神・淡路大震災でこんなデータが残っています。
地震によって生き埋めや閉じ込められた被災者のうち、自力で脱出したり家族や友人・隣人、地域の人に救助された方の割合は97.5%。行政による救助隊で助けられた人はわずか2.5%。圧倒的に、自助・共助が災害下で役立つものだったのです。ここまで公助の割合が低くなった原因は、当時、行政も大きく被災したことで機能が麻痺してしまった(「公助の限界」と言う)からでした。
また、2011年に発生した東日本大震災でも同様に公助の限界が明らかとなり(参考:「平成26年版 防災白書」| 内閣府 防災情報のページ)、災害の規模が大きくなればなるほど公的機関の迅速な対応力は小さくなるため、命を守るには行政に頼りすぎない「自助・共助」が重要だという認識が人々の間に広がりました。
今回紹介する「ツナガル+」は、自助・共助のコミュニケーション基盤を形成するアプリです。自治体向けの「ツナガル+管理者向けサービス」と一緒に自治体が導入することで、地域全体での自助・共助・公助の強化を担います。
2つのモードで「ツナガル+」
「ツナガル+」は名前やニックネームなどを登録してメッセージをやりとりするSNSとGPSを組み合わせたシステムを用いています。平常時と災害時で、それぞれ活用方法が変わります。
平常時は地域活動の情報交換・発信ツール
平常時には現在地周辺のユーザーを探し、メッセージのやりとりができます。
また自治会や地域サークル、学校のPTA会のような、地域の人々に関係するコミュニティがアプリ内で作れます。作成したコミュニティには周辺ユーザーしか入れないため、地域外の人がのぞくことはできません。
コミュニティ内では各人がトピックを立て、その中でメッセージをやりとりする仕組み。この機能を活用すれば、例えば町内会の情報や地元イベントの受発信など、地域コミュニティの活性化がはかれます。
災害時には「災害モード」に切り替わり
災害時にはモードが切り替わり、最寄りの開設避難所が一覧、地図上で表示されます。
また、自治体から災害に関するお知らせや支援情報を入手したり、避難所グループ内で掲示板のように情報共有を行えます。
避難所までたどり着くことができず、やむを得ず公園や車の中など(あらかじめ自治体により定められた指定避難所に対して“指定外避難所”と呼ばれる)で待機せざるをえなくなった場合でも、アプリ内に「指定外避難所グループ」を作成することで、周囲の人や自治体へ自分がいまいる場所や被災状況の発信ができます。
なお「ツナガル+」アプリは無料でダウンロードできますが、次に紹介する「ツナガル+管理者向けサービス」をお住まいの自治体が導入していなければ、災害モードの利用はできませんので注意してください。
自治体向けには「ツナガル+管理者向けサービス」
自治体の危機管理者向けに提供されている指定外避難所支援SaaS「ツナガル+管理者向けサービス」は、
- 災害発生時に市民の持つ「ツナガル+」を災害モードへ切り替え
- 偶発的に発生した指定外避難所コミュニティを地図上でリアルタイムに把握
- コミュニティとのチャットを通じて現場の情報収集を正確に把握
- 特定エリアのアプリ利用者に一斉にテキストメッセージを送信する
など、自治体から「ツナガル+」をコントロールするサービスです。
過去の災害現場において自治体の危機管理者には、あらかじめ指定した避難所での情報は入手できても、指定外避難所の場所・人数・要望内容などを正確に把握するのが難しい という課題がありました。
このサービスを利用すれば、指定外避難所を含む現場への支援を的確に計画したり、防災無線の代替手段として緊急情報を一斉配信したり、自治体から市民への緊急対応(公助)がスムーズになる と考えられています。
なお、「ツナガル+管理者向けサービス」の基本機能は無料で、一部機能は有料となり、自治体の人口規模により価格が異なります。詳細は提供元へ問い合わせが必要とのことです。(連絡先:tsunagaru-plus@bitstar.jp)
情報収集に課題を抱えていた福岡市で実用化
「ツナガル+」および「ツナガル+管理者向けサービス」は、現在、福岡県福岡市で導入されています。福岡市では2016年に発生した熊本地震で指定外避難所の把握が困難だったことから、いちはやくこのアプリを市民へ普及し始めました。
「ツナガル+」紹介動画(引用:福岡市公式ホームページ)まとめ
「ツナガル+」は防災のみに機能を特化するのではなく、平常時も地域の人々が交流目的で使うことにより、いざ災害が発生した際に「使い方がわからない」と困ったり焦ったりせず、普段通りの操作で効率的に自助・公助に役立つ情報の受発信が可能となるのが強みです。
また、過去の災害では把握されにくかった指定外避難所の避難者がコミュニティグループを立ち上げることで、周辺の人々や行政が認知し、支援の手を差し伸べやすくなります。
自治体向け「ツナガル+管理者向けサービス」とともに、地域の減災に大きく貢献する画期的なシステムとして、今後全国への普及が期待されます。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000023.000015985.html,https://www.city.fukuoka.lg.jp/shimin/t_bousai/tsunagaru_plus.html、https://terihaco-jcom.com/magazine/tsunagaru/、https://www.bousai.go.jp/kaigirep/hakusho/h30/honbun/1b_1s_01_01.html