防災対策といえば、ご自宅での非常食の備蓄や非常用持ち出し袋の用意など、“モノの準備”を思い浮かべる方が多いでしょう。ですが、それらを活躍させられるのはあくまで生き残ってからのこと。「突然の災害に対し、生き残るためにどうすればいいか」をひとりひとりが理解しておくことが先決です。今回は、災害が起きた後の状況や取るべき行動を疑似体験できるゲーム「いえまですごろく」を紹介します。

大人も子どもも楽しみながら知識が身に付く!防災教材「いえまですごろく」

災害時のシチュエーションを疑似体験するボードゲーム

「いえまですごろく」とは、地震発生時に起こりうる問題をゲーム形式で学ぶ防災ボードゲームです。

プレイ人数は3〜6名。対象年齢は小学校4年生から。プレイ時間はおよそ25分で、ご家庭だけでなく地域のイベントや学校の授業でも防災教材として取り入れやすいボリュームと難易度です。

ゲームのストーリーは「外出中に地震が起きたあと、街中を通ってわが家を目指す」というもの。基本的なルールはすごろくと同じで、プレイヤーがサイコロを振ってコマを進め、マスに書かれたさまざまな問題をクリアしながらゴールを目指します。

スタート地点は「塾」「公園」「ショッピングセンター」「駅」といった、子どもや大人が日常の中でよくいるスポットです。途中には地震が起きた後、街なかでは何が起きるのか、家までの帰り道にどんなことに遭遇するのかが記されたマスや、プレイヤー同士が協力し、手持ちの「救助カード」を出し合わないと先に進めないマスが存在します。

このようなマスを通じて、子どもたちは災害発生後のシチュエーションや災害現場で必要な「共助」を疑似体験できるのが特徴です。

防災教材として41都道府県に普及

このゲームは、東日本大震災をきっかけに立ち上がり、非常食定期宅配サービスなど様々なボウサイ事業を展開して来た「yamory(やもり)」日本赤十字社愛知県支部によって、2017年に共同開発されました。

開発の際には

・子どもたちをとりまく普通の環境に設定を合わせている
・小学校の授業時間の中で完結できるようにゲームバランスを整えてある
・誰よりも早く上がることが目的ではなく、共助を学びながら安全に家に帰ることを目的としている

という点にこだわられており、学校の先生が抱える「防災はどうやって授業で教えたらいいの?」という課題、そして子どもたちの「遊びながら学びたい」想いの2つに寄り添う防災教材となっています。

「いえまですごろく」は2023年6月時点で累計2930個が販売され、これまで41都道府県に導入されました。ご家庭はもちろん全国各地の教育機関や自治体等、さまざまな場所で活用されています。

2023.7〜クラウドファンディングがスタート

yamoryは2023年7月10日(水)から、国内最大のクラウドファンディング・CAMPFIREが運営する「社会問題と向き合い、課題解決に取り組んでいる人に特化したプラットフォーム“GoodMorning”」にて、「いえまですごろく」のプロジェクトを立ち上げました。

防災教育の広がりを願い、より多くの子どもたちが気軽に遊べるよう、「いえまですごろく」の無料ダウンロード版の制作にチャレンジするとのことです。

無料ダウンロード版はwebサイトからデータをプリントアウトし、切ったり貼ったりすることで遊べるようになる仕組みです。

クラウドファンディングの目標金額は100万円。応援者には子どもたちの防災教育に自分ごととして関わってもらいたい、防災を広める活動をする「1000人の当事者の1人になってほしい」との願いから、プロジェクトのリターンには「子どもたちの防災教育を応援する1/1000人になるコース(支援金額1000円)」が用意されています。

クラウドファンディングは2023年8月29日(火)23:59まで支援を受け付けています。

>>>プロジェクトを見る・支援をする

 命を守る「防災教育」のきっかけづくり

 子どもの頃から防災意識を養うために

これまで大災害を目の当たりにしながら生きてきた大人なら、日頃から必要性を感じて災害への対処法を調べ、防災意識を自分で高めようとすることがあるかもしません。

一方で、子どものうちは防災を自分ごととして捉えにくいものです。そうした場合、いざという時には防災意識のある大人が率先して子どもを守るのが大切です。ですが、大人だけが防災意識を持っていれば良いかというと決してそうとはいえません。

塾や子ども同士のお出かけなど、子どもが一人きりでいるシチュエーションは日常の中に溢れています。災害はいつどこで起きるかわからないからこそ、子どもが大人のいない場所で災害に巻き込まれてしまう可能性はとても高いといえるでしょう。

子どもが自分で自分の命を守れるようになるための鍵のひとつが「防災教育」です。

防災教育といえば、これまで画一的な避難訓練が中心でしたが、近年はさまざまに趣向を凝らしたものが行われています(参考:内閣府防災情報のページ「防災教育をめぐる環境の変化」より)。例えば、自治体等の防災イベントにおけるAED体験、炊き出し体験、消火器訓練、起震車体験といった体験型コンテンツが子どもたちから好評を博しているようです。

他方、ご家庭で自分の子どもや学校で防災を教えようとした場合、一言で防災といっても範囲が広いため、「どこからどこまで手をつければいいのか」「どのように教え始めればいいのか」など悩む方も多いようです。

そんな時に役立つのが「防災教材」です。

防災教材は、災害発生の仕組みや避難行動、災害への備え方などを学べるコンテンツ。子どもたちが興味を持ちやすい絵本や動画、オンライン教材など多様な種類のものが開発されています。

なかでも「いえまですごろく」のように、カードやすごろくといったゲーム性のある防災教材は、災害への対処法を体と頭を使って楽しみながら主体的に学べるのが魅力です。初めて子どもに防災を教えるという大人にとても、初めて防災に触れる子どもにとっても、ぴったりな教材と言えるでしょう。

まとめ

災害大国とも言われる日本で暮らす上で、わたしたちの生活と防災は切ってもきれない関係です。年々さまざまな災害のリスクは高まっていますが、特に街全体が突如被害を受け、大きく環境が変わってしまう「地震」については、あらかじめ災害発生後に何が起きるのか・どう行動できるかを一人ひとりがシュミレーションする機会を持つことが大切です。

「いえまですごろく」は子ども向けの防災教材ですが、大人も一緒に遊べます。ご家庭や学校などで、防災について考える時間を作りたい・防災教育に取り組みたいと考えている方はぜひご利用ください。

 



参考:http://iemadesugoroku.jp/,https://camp-fire.jp/projects/view/676661,https://inquire.jp/2019/06/21/ieade-sugoroku/,https://www.bousai.go.jp/kohou/kouhoubousai/h21/01/special_02.html,