災害は自宅、会社、旅行中など、いつどんな場所や状況下で起きるかわかりません。私たちは1日中災害リスクに晒されていると言っても過言ではなく、そのリスクは年々増える一方です。

しかし、食料や水を戸棚にしまっておいたり、防災リュックを玄関先に置いたりといった防災対策をしていると、「災害は自宅にいるときに起きる」というイメージが知らないうちに強くなっているかもしれません。

実際の暮らしを考えると、1日中自宅にいるという人は少ないのではないでしょうか。社会人であれば自宅ではなく勤め先にいる時間の方が長い場合もあるでしょう。そうすると、勤め先で災害に巻きこまれるリスクは自宅よりも遥かに高くなります。働く人は「勤め先にいるとき災害が起きたらどう行動したらいいのか」「防災備蓄品はどこにあるのか」など、勤め先での勝手を知っておく必要があるはずです。

実際に、働く人にとって勤め先での防災はどれくらい意識されているのでしょうか?

今回の記事は、防災の実態をお届けする回です。
企業・法人などにサブスク型防災備蓄サービスを提供している株式会社Laspy(本社:東京都中央区、代表取締役社長 藪原拓人、以下Laspy社)が実施した「はたらく人の防災意識」の調査結果を共有します。

「はたらく人の防災意識」は高い?低い?

2022年10月、株式会社Laspyが全国10代~70代の男女516名を対象に「はたらく人の防災意識」に関する調査をインターネットにて実施し、翌月2022年11月にその結果を公開しました(参考:PRTIMES「はたらく人の防災意識の実態調査」2022年11月4日

災害を「自分ごと」として考える人がほとんど。でも……

調査結果によると

  • 日本で年々自然災害の被害がより大きくなっていると感じている方は 92.2%
  • 自分自身が大規模な自然災害に巻き込まれそうだ考えている方は 55.4%

と、かなり多くの方が災害に対する危機意識を自分ごととして持っていることがわかりました。

引用:PRTIMES

一方で、大規模な自然災害に巻き込まれると想定している場所については「家にいるとき」と答える人が52.7%と半数以上。「会社や勤め先にいるとき」と答えた方は35.3%でした。

また、「自分の会社・勤め先の防災備蓄品の場所についてはどこにあるか知らない」と答えた方が60.3%となり、実に6割以上が自分の会社・勤め先でのいざというときの防災備蓄品の保管場所を知らないという実態が明らかとなりました。

自分の会社・勤め先における防災備蓄の管理状況に関するヒアリングではこのような声が寄せられたそうです。

コロナ禍をきっかけにリモートワークが普及したり、職業によって働く場所や時間はさまざまな形があります。しかし、働く人の中で「勤め先での被災」を意識したり、勤め先の防災について詳しく理解している方は多くないのかもしれません。

「防災対策をしている会社」への印象は?

「従業員のために防災対策を実施する会社について良い印象を持つ」という方は91%でした。多くの方が防災を自分ごととして捉えているからこその結果だと考えられるでしょう。

会社や勤め先で実施してほしい防災対策「非常時の食料・水の備え」が圧倒的な割合で1位となりました。次いで、災害対応マニュアルの整備(14.7%)、安否確認システムの導入(7.6%)、毛布・簡易寝具などの備え(5.8%)、転倒防止器具などの対策用品(5.0%)、トイレットペーパー・衛生用品(4.8%)など、はたらく人々が様々な角度から備えを具体的に考えていることがわかりました。

働く人の防災意識を高めるには?

ここまで紹介してきたLaspy社の調査より少し前、2022年8月に、キャリアや就職・転職全般に関する研究や各種調査を行う機関「Job総研」を運営するライボも、働く社会人男女552人を対象に防災意識調査を実施しています(参考:2022年 防災意識に関する実態調査)。

ライボの調査によると、「勤務先の防災意識は高め」だと答える社会人の方は78.7%だったそうです。

 

この結果をLaspy社の調査結果と一緒に考えてみると、

  • 防災対策をしている会社は多く、働く人は日頃の防災意識が高いため、そうした会社に好印象を持つ
  • 会社に備えて欲しい防災備蓄品について、働く人にしっかりとした要望がある
  • しかし、実際に防災備蓄品などが会社のどこにあるか知っている働く人は少ない

という実情が浮かび上がってきました。

阪神淡路大震災以降続く各地での災害経験から、会社での防災対策は業務として定着し、年に一度の防災訓練や備蓄品の棚卸・見直しなどが全国各地で実施されています。これらは従業員が「自社の防災意識は高い」という印象を持つひとつの要因になっています。

しかし、会社の防災に関する事柄は、総務部門や危機管理部門など特定の部門メンバーによって企画・立案・実行が行われることがほとんどです。

すると、実行に関わったメンバーは自社の防災対策を理解しているものの、一般の従業員は防災訓練の参加以外ほとんど防災対策について理解する機会がないという状況が発生しやすくなります。

社内に防災備蓄品や救助工具が備えられていても、その存在を知っている防災担当者でなければ分からないとなれば、いざという時にスムーズに災害へ対応することができません。

会社での防災対策は一部の人が理解しているだけではなく、社内で働くすべての人が理解していることが重要です。会社側が従業員を防災訓練に参加させる以外に、自社の防災対策について積極的な情報共有をしていけば、勤め先における働く人の防災意識を今よりも高められるかもしれませんね。

まとめ

自分ごととして捉える人は多いものの、つい「自宅での備え」に意識を向けがちな防災対策。しかし実際の生活リズムや年々災害発生件数が増加していることを考えると、自宅以外の場所で被災する確率はとても高いはずです。

特に、働く人は会社で被災した場合すぐに自宅へ戻ることができず、しばらく社内で過ごさざるを得ない可能性があります。現時点では働く人個人の防災意識は高いものの、勤め先での防災対策について把握している人は少ないことが、今回の調査結果で明らかになりました。いざという時に全員がスムーズに対応できるかは懸念が残るといえるでしょう。

今後、防災のキーワードである「自助・共助」を実現するためには、働く人が社内の防災対策を理解する機会を会社側が工夫して設けていくことが期待されます。

 

 



参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000092071.html、https://laibo.jp/info/20220905/