“平成30年7月豪雨”や“令和2年7月豪雨”のように、ここ数年、全国各地で大きな水害が多発しています。雨の降り方は長く降り続くものではなく、50mm/時間を超える「ゲリラ豪雨」のように短時間で局地的にまとまって降る傾向が年々増えているそうです。

2000年以前の日本では、水害といえば“台風”がもたらすものだというイメージが強くありました。しかし今では「局地的大雨(集中豪雨)」による被災のリスクが台風を遥かに上回って存在します。

局地的大雨の恐ろしいところは、広範囲な雨の最中、突然ピンポイントで発生するため、気づいたときにはすでに水が迫ってきていた・土砂崩れに巻き込まれていた、など逃げ遅れのケースが多いこと。隣の県で雨が降っているなと思っていたら、いきなり自分の街が洪水に……。そんなことが十分あり得るのです。

局地的大雨の兆候を見極めるのは専門家でも難しく、各地の状況をもとに可能な限り被害を予測して対応策を立て、素早く実行できるかが減災の鍵となってきます。

今回紹介するのは、株式会社Spectee(本社:東京都千代田区、代表取締役:村上建治郎、以下スペクティ)が開発に成功したという、水害現場の3Dマップ技術。最新技術を用いてリアルタイムのデータから現場や周辺状況を再現し、災害対応の迅速化、被害の最小化に貢献するテクノロジーです。

臨機応変な判断に役立つリアルタイムな3Dマップ技術

スペクティは2011年の東日本大震災をきっかけに立ち上がった「AI x 防災・危機管理」に関する事業を行う企業です。

引用:株式会社Spectee

震災時、ツイッターなどのSNSによる個人からの発信が、TVなどのマスメディアよりも現場の状況をタイムリーに伝えていたことに着目。AIを活用したビッグデータ解析をもとに災害やリスクをいち早く正確に可視化し、現場の意思決定を円滑にする防災・危機管理の解決に向けたリアルタイム危機管理情報サービス『Spectee Pro』などのサービスを提供しています。

1枚の画像からでも被害状況が分かる

そんなスペクティは2021年5月に「水害発生時の浸水範囲と浸水深の3Dマップ化に成功した」と発表しました。この3Dマップには デジタルツイン技術 が用いられているそうです。

デジタルツインとは、AIなどで収集・解析したデータをもとに仮想空間上で現実世界を即時の連動性を持たせて忠実に再現したもの。すでに様々な産業で活用されており、特に製造業界への導入に期待されています。

製造現場では、稼働状況を仮想空間に反映させることで生産ラインを止めずに製造工程の問題点を改善したり、試作を仮想空間上で行いコストの削減などができる。引用:株式会社Spectee

リアルタイムな変化を俯瞰できることから、防災・危機管理の分野でも

災害発生前:高度なシュミレーションによる

  • 被害の事前予測
  • 予防策、避難計画の構築
  • 動的なハザードマップの作成
  • リスクの正確な把握による、損害保険料の料率算定の効率化

災害発生時や復旧時:刻々と変わり続ける被災状況を把握し

  • 適切な避難指示の発信・誘導
  • 効率的な救急・消防・警察の派遣
  • 迅速な救助、救護活動
  • 救援物資の足りないところを把握し、被災者へ物資の適正配分
  • ライフラインの効果的な復旧

などができると期待されているそうです。

今回、スペクティが技術検証を行なったモデルケースは、令和2年7月豪雨時の熊本県球磨川周辺。SNSに投稿された当時の画像や降水量のデータ、降雨地の地形データ、さらに過去の水害データを組み合わせてAIに解析させ、浸水範囲と浸水深を瞬時にビジュアル化させています。

検証により、この技術は「たった1枚のSNS画像からでも災害現場の推定がかなり正確にできる」とわかりました。これが何を意味するかというと、実際に水害が発生したとき、SNSや道路・河川のカメラ等を通じて得られた画像や映像が僅かでも、その周辺地域も含めた推定浸水範囲および浸水深をリアルタイムに可視化し、被害予測を瞬時にたてられるのです。

まとめ

水害は水の流れとともに広範囲にわたって被害が発生・状況変化が起きます。災害現場全体を把握し対応するのは、これまで困難なことでした。

この3Dマップ技術は、今後、災害対策計画の迅速な策定に貢献すると期待されています。

 

出典:PR TIMES(プレスリリース)