津波発生時は、いかに早く高台に避難するかが生死を分ける重要なポイントになってくる。その為、素早い判断、素早い行動が求められる。東日本大震災では、大津波警報が発表されてから到着までの時間は実に11分であった。(資料参考)

今回の震災では,地震発生 3 分後の,14 時 49 分に大津波警報が発表され,その到達予想時刻は 15 時 00 分であった。退避までの余裕は 11 分である。
引用元: 東日本大震災における被害と対応について – 総務省消防庁を参照

この間に、飲料水や食品が多く詰まった防災袋を持って避難することは、素早い行動に適しているとはとてもいえない。必要最低限のものだけ持ち、身軽な状態で逃げることが最優先だ。今回は、そんな緊急避難に特化した防災グッズ「これだけ持ってシュッと逃げる防災タンブラー」を紹介する。

これだけ持ってシュッと逃げる防災タンブラーとは


この商品は、高知大学の防災サークル「防災すけっと隊」が企画し、高知市内のドラッグストア「よどや」と共同開発・販売を行った。通称「DASHタンブラー」と呼ばれている。
冒頭でも述べた通り、従来の防災袋は、津波などの緊急避難に適していない。実際の被災者からも同じ意見が上がっており、「いちはやく逃げる」ことをキーワードに開発された。その為、避難生活に最低限必要なものだけを、持ち運びやすいタンブラーの中に詰め合わせてある。

特徴と気になる中身は?


この商品の特徴は、タンブラーを防災グッズとして、うまく活用しているところにある。
そのうまく考えられた特徴を3つ紹介しよう。

①すぐ取って逃げられる

片手で持てるコンパクトサイズのため重くなく、避難の際に必要以上の労力を使わない。また、大きくて場所をとる防災袋と違い、場所を選ばない。玄関に置いておけば、すぐに持って避難することができる。

②容器になる

避難生活の際には、薬を飲むためのコップとして活用でき、炊き出しを入れる容器にもなる。普通のコップやお皿と違い、保温性に優れているため、寒い時期にも重宝する。

③貴重品を保管する入れ物になる

なくしやすい指輪やネックレスなどの小物類を、一箇所にまとめて保管しておくことができる。いつもと違う慣れない環境で、大切なものをなくさないための保管庫の役割を果たす。

最初の中身には、アルミシートと小型ライト、混乱時の気持ちを落ち着かせるためのアメなどが入っている。緊急避難に特化しているため、入っているものは少ないが、必要な機能を十分に備えている。

すぐに在庫切れになる人気商品に!


この商品は、2017年2月~9月に、高知県内の津波浸水被害が予想される地域で、学生が実演販売を行った。当初は、期間限定での販売を予定していたが、用意していた120個がすぐに在庫切れとなった。9月末までに販売個数は300個を突破し、12月末までの販売延長という、大人気商品となっている。実際に商品開発を行った学生達から説明を受けることで、商品の利便性がダイレクトに伝わった結果ではないだろうか。

従来の持ち運ぶための防災グッズはバックの形状や内容物だけに意識がいきがちだが、緊急避難に特化させ、持ち運びしやすいタンブラーに着目したところが素晴らしい。

東日本大震災以降、津波災害への関心が高まり、人々の緊急避難することへの意識が向上したように感じる。しかし、いち早く逃げる事に特化した備えの部分がまだまだ足りていないのではないだろうか。DASHタンブラーは現在、高知県内のみで販売ということだが、その他の地域でも販売し、常備品としたい。