地震や台風、水害といった自然災害では、水道やガス配管が破損したり、電信柱が倒壊してしまうなどによって、生活に不可欠な水道、電気、ガスなど、ライフラインの供給がストップしてしまう場合があります。ライフラインが寸断されると、復旧するまでの間は日常生活に制限がかかり、場合によっては命に関わる問題にも発展します。今回の記事では重要なライフラインの一つである「水」にフォーカスし、被災地での水不足問題を解決する画期的なテクノロジーをご紹介します。

災害時のライフライン「水」

災害時の避難現場におけるWOTA独自調査より(引用|WOTA株式会社プレスリリース)

長年課題となっている災害時の水不足問題

災害時の避難生活において被災者が一番困るのは「水の確保」です。水は生命維持に欠かせない飲み物としてはもちろん、トイレや体の洗浄など、衛生環境を保つ生活用水として重要な役割を担っています。

日本赤十字社が被災者を対象に行なったアンケート調査によると、被災者が災害時に必要とした支援として、「1位:入浴、2位:睡眠、3位:トイレ」という結果があったといいます。内閣府の「避難所運営ガイドライン」でも、健康・衛生の観点から重要性が指摘されているのが「避難所での入浴支援」です。

しかし、大量の水が必要な入浴はライフラインが寸断した避難所で最も難しいことの一つです。

避難生活で必要な1人分の飲み水の目安が約3Lに対して、衛生的な入浴には1人あたり約50Lの水が必要だと言われています。大量の水を常時備蓄できる避難所はほとんどありません。

避難所での水不足は長年にわたって深刻な問題となっていますが、水道施設施設の老朽化や整備人材不足などの理由により、なかなか解決が難しい課題とされていました。

AI水循環システム「WOTA BOX」

最先端の水処理の自律制御技術を採用

そうした現状を受けて、WOTA(ウォータ)株式会社(代表取締役CEO・前田 瑶介)によって開発されたのが、水道のない場所での水利用を実現するポータブル水再生システム「WOTA BOX」です。

6つのフィルターを内蔵(引用|WOTA株式会社)

活性炭とRO膜の合計6つのフィルターによるろ過で不純物/細菌/ウイルスを除去し、深紫外線の照射・塩素系消毒剤の投入をすることで、99.9999%以上の細菌/ウイルスを除菌。

自律制御システムを中枢としたWOTAのテクノロジー(引用|WOTA株式会社)

内部に搭載された複数の独自センサー・AIを組み合わせた水処理自律制御システム (WOTA CORE)が、水質・システムを常時監視・制御。

これらのテクノロジーにより、排水の98%以上をろ過して循環させ、公衆浴場の水質基準(上り用湯・上り用水)(「公衆浴場における水質基準等に関する指針」(平成12年12月15日付生衛発第1811号 厚生省生活衛生局長通知)に準拠した水質を保つ水を精製できるといいます。

「WOTA BOX」があれば、100Lの水で約100回のシャワー入浴を実現したり、排水の量を通常の50分の1以下に抑えることができます。使える水が少ない環境でも効率的に清潔な水を繰り返し使えるのが、非常に大きな強みです。

「誰もが使いやすい」というこだわり

配管工事などは必要なし。チューブとコンセントを挿すだけで簡単に設置できる(引用|WOTA株式会社)

避難所に来た不特定の人が使えるよう、ボタン一つで操作できるなど、誰でもわかりやすい設置方法・使用方法の工夫が凝らされています。

メンテナンスからトラブル対応方法まで、マニュアルはすべてフロントディスプレイに表示される(引用|WOTA株式会社)

また、AIがリアルタイムに機器の動作診断を行ってくれるので、専門知識のない人でも清潔な水を適切に提供できます。

オプションユニットでもっと便利に

水道がなくても様々な水回り設備に接続可能(引用|PR TIMES WOTA株式会社)

「WOTA BOX」はオプション設備と一緒に使うことで、さまざまなシチュエーションで便利に水が使えるようになります。

「屋外シャワーキット」と繋げば、いつでもどこでも清潔な水でシャワーを浴びる環境を提供できます。「手洗いシンクキット」を繋げば、いつでもどこでも清潔に手を洗う環境を作れます。

災害時だけの使用だけでなく、日常的に活用させられます。

(引用|PR TIMES WOTA株式会社)

すでに各地で水支援を実施。今後の広がりに期待!

「WOTA BOX」は試作期の段階から、2016年の熊本地震をはじめ、2018年の西日本豪雨、北海道胆振東部地震などの避難所で入浴支援を実施してきました。

西日本豪雨、北海道胆振東部地震においては避難所で100名以上に対してのシャワー提供を行う様子がSNS等で話題となり、全国展開への要望が急速に高まりました。

2022年では台風15号の影響で断水が発生した静岡県に導入され、駅を拠点に展開し、被災者の方々にシャワー設備の提供が行われました。

まとめ

「WOTA BOX」を開発したWOTA株式会社は2021年に環境省が新設した”環境スタートアップ大賞”にて「環境スタートアップ事業構想賞」を受賞。「WOTA BOX」は2022年にグッドデザイン賞を受賞するなど、水インフラ分野で大きな注目を集めています。

現在も全国各地の自治体で「WOTA BOX」の導入が進められており、今後ますます災害下での活躍に期待が高まります。

 



参考:https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/33781、https://wota.co.jp/wota-box/