人々が生活するのに水は不可欠である。人間は体内の3分の2を水分が占めており、水分が確保できなければ死に至る。地域的な問題や災害などにより飲み水が確保できない場合もあるだろう。

そんな危機的な状況を救ったのが、可搬式浄水装置を用いた水資源機構の取り組みである。水資源機構とは、水の安定的な供給の確保を図ることを目的に、平成15年10月1日に設立された独立行政法人である。

以下、具体的にその取り組みを述べていくこととする。

可搬式浄水装置とは?

可搬式浄水装置は、海水などを膜に通して淡水を作り出す装置で、 搬送可能なものである。浸透圧の違いを利用した複数の膜に通すことにより、海水を淡水に変えられる。

サイズは、本体2.0m×1.9m×1.6m(重量約1.7t)、前処理部1.9m×2.3m×1.8m(重量約1.2t)で、10tトラック1台、もしくは4tトラック2台で運搬できる。1日あたり約50立方メートル(家庭における通常の使用水量で200人分。緊急時の飲料水にして約16,000人分)の給水が可能であり、各地での水不足解消に大きく寄与している。

世界遺産、小笠原諸島での活用事例


小笠原村では、1年以上続く少雨により、2016年秋以降は深刻な水不足に見舞われてきた。公共施設のシャワーを停止するなど節水を徹底したが、危機的な状況であったため、水資源機構がついに動き出すこととなる。

小笠原村から要請を受けた水資源機構により、父島に大型の可搬式浄水装置を送り込み、3人の同機構職員が派遣された。2月17日~20日までの4日間、可搬式浄水装置を稼働させるための技術指導を行い、その後は、村が単独で装置を運転し給水活動を継続。同装置の導入により、人口約2000人の小笠原村は深刻な水不足から脱出することができた。

災害時の適用事例


熊本地震では、最大44万戸が断水し、生活に欠かせない水資源を確保できない状態であった。水資源機構は、2016年4月18日に緊急災害対策支援本部を本社(さいたま市)に設置し、同装置とともに被災地へ向かい、支援を開始した。

支援の内容は、被災地に職員を派遣して可搬式浄水装置による給水支援を行うことである。浄化した水は、飲料水以外にも風呂用水としても活用された。24日夕刻には正常な状態に復旧したことから、同日で給水支援を無事終了。給水支援活動の期間中、延べ90m3の飲料可能な水をつくりだしたのである。

また、東日本大震災の際も各地で可搬式浄水装置が役立つこととなった。茨城県桜川市では、霞ヶ浦用水の送水管が破損し、利水者である桜川市の水道用水が断水。その際、機構職員により水の供給作業が施された。供給された水は、飲料水として給水されるだけでなく、病院などでも使用されることとなった。

宮城県女川町では、女川町の浄水場から女川町沖の有人離島である江島までの水道用水の供給が断たれてしまった。水資源機構は、浄水装置の貸与や現地へ職員の派遣を行い、さらには女川町職員への技術指導を実施。それにより、江島では飲料水が確保できるようになった。

おわりに

以上が、水不足を救うための装置である可搬式浄水装置の性能と、それを活用した水資源機構の取り組み事例である。実際のところ、水以外にも食糧や温度など、災害時に必要としているものは数多くある。今後、テクノロジーを活用した防災機器が数多く生まれることを期待したい。