「ピクトグラム」という言葉をご存知だろうか?「ピクトグラム」とは絵だけで何らかの情報を提供したり、注意を促したりする視覚記号のことだ。そんなピクトグラムは避難誘導サインにも使われている。しかし時代の変化と共に、そのサインも変化している。今回はそんな多様化する避難誘導サインを紹介したい。

みんなが理解できる標識「ピクトグラム」って?

非常口の誘導サインといえば、多くの人が緑色と白色の表示を思い浮かべるだろう。そして、そのサインは緑色の人間が出口に向かって走っているはずだ。このように、ほとんどの人が同じデザインを思い浮かべることができるであろう、そのサインは「ピクトフラム」と呼ばれている。

日本では、1964年に開催された東京オリンピックの際に開発された。というのも、一目見ただけでそのマークがなにを示すのかわかる「ピクトグラム」には言葉の壁がない。つまり、「非常口」が読めない外国人も避難誘導サインをみれば、非常口の場所が理解できるということである。

一般的によく街中で見かける「ピクトグラム」は何があるだろうか。トイレのマーク、喫煙・禁煙の表示、優先座席の表示、車いすのマーク、レストランのマーク… これらの「ピクトグラム」は、すぐに思い浮かべることができたのではないだろうか。

日本全国のみならず、海外へいってもそれぞれの表示がなにを表しているかわかるのが「ピクトグラム」だが、国際的に統一されているものもある。たとえば、非常口の誘導サインは1987年に国際標準化機構(ISO)に組み込まれた、日本発の「ピクトグラム」である。

いつも見ている「ピクトグラム」が動き出す!?「アクトグラム」とは?

「ピクトグラム」がデジタル化し、画面上で動き出すという新たなサインがある。その名も「アクトグラム」。

「アクトグラム」とは、従来の静的な「ピクトグラム」に動きが加わり、人々にその場でとるべき行動を促すというものだ。これは特に、災害発生時に役立つ。そのサインを開発したのは、一般社団法人「日本ボーサイン協会」という団体だ。

「日本ボーサイン協会」は災害・火災・救急などの緊急事態発生時に、人々の命や暮らしを守るために役立つサインや情報を研究開発・普及促進を図る団体である。この協会は、日本の防災力の向上のために様々な企業や有識団体と協力し、災害から人々の命を守るサインおよび情報提供のシステムを開発している。

「日本ボーサイン協会」が開発した「アクトグラム」は、もともと誰にでもわかりやすいサインである「ピクトグラム」自身が動くことで、さらに人々の行動を喚起するのである。

地震発生時における「アクトグラム」の避難誘導

「アクトグラム」の活用方法は無限大だが「日本ボーサイン協会」が開発した、地震発生時における「アクトグラム」の避難誘導には2つの段階がある。

  1. 揺れる前・揺れが続いている最中(-10秒~30秒):「離れる」→「頭を守る」→「しゃがむ」のループ
  2. 揺れが収まった直後(30秒~2分):頭を保護しながら安全地帯へ向かって歩いていく

 

この「アクトグラム」にさらに2つの段階が加わり、地震発生直前から全部で4つの段階で、音声メッセージ、地区MAPの表示やサイネージや文字情報の表示などを組み合わせ人々の命を守る。

このように「アクトグラム」とその他の視覚情報・聴覚情報を組み合わせることで、災害大国である日本にいる人々の命と暮らしを守るための技術がある。そのことを我々は知っておくべきであり、広めるべきだろう。

 

今回は動き出す避難誘導サイン「アクトグラム」を紹介した。しかし「日本ボーサイン協会」はじめ様々な所で、緊急事態に人々の命を守る工夫がなされている。私たちはそれを実際に使う側の人間として、最低限の知識は持っておきたいし、国内に限らず様々な人に広めるべきであろう。