近年、豪雨に見舞われた被災地で断水が発生し、避難所が長期間深刻な水不足に陥るというニュースが相次いでいます。断水時の避難所では飲み水だけでなく、お風呂やトイレ、洗濯などの生活用水が足りなくなることで衛生状態が損なわれやすくなります。少ない水を生活に必要な場面で優先的に使っていく中で、後回しにされやすいのが「歯みがき」です。人によっては普段からついつい後回しにしてしまうこともある歯みがき。災害時は水の節約を意識するあまり、特に二の次となりがちです。しかし、災害時に歯みがきをしなかったことが命を落とすことにつながった事例もあるのです。今回は災害時における歯みがきの大切さと、備えとしての「無水ハミガキセット」を紹介します。
歯のケアが命も救う!?むし歯だけじゃない、歯みがきで予防できることとは
命にも関わる「肺炎」を防ぐことにもつながります
小さい頃から親御さんや学校の先生に「虫歯にならないよう、毎日歯を磨きましょう」と教わってきた方は多いのではないでしょうか。
歯みがきは歯科医学的にとても大事な予防処置。口の中には数百種類の細菌が数千億個存在しており、1日歯みがきをしないだけで細菌の数は倍々に増えていきます。するとむし歯ができてしまったり、歯茎や歯を支える骨を溶かしてしまう歯周病を発症するリスクが高まります。定期的な歯みがきはむし歯や歯周病の原因となる細菌を減らし、発症を防ぐことができるのです。
また、それだけではありません。歯が生えている口というものは、胃へ向かう食道のほかに肺へ向かう気管につながっています。通常は唾液や食べ物を飲み込むと食道に入っていきますが、飲み込む力が弱い方の場合は誤って気管に入ってしまうことがあります(誤嚥(ごえん)という)。
誤嚥が起きるとむせることで気管から異物を出す反射が起こりますが、加齢などで反射が鈍っている状態だと、肺の中に唾液や異物が入ったままになってしまいます。その際に口の中が清潔でないと、唾液と一緒にたくさんの細菌も肺の中に入ることになります。これらの細菌によって肺が炎症を起こしてしまいます。
この炎症は「誤嚥性肺炎」といい特に高齢者に多く、70歳以上で肺炎と診断された人の70%以上が誤嚥性肺炎であるといわれています。厚生労働省の令和元年(2019)人口動態統計月報年計によれば、誤嚥性肺炎による死亡者数は4万人を超えており、日本人の死亡原因第6位となっています。もちろん高齢者だけでなく子どもから大人まですべての人にとって、誤嚥性肺炎のリスクはゼロではありません。
1995年に起きた阪神淡路大震災では、避難生活で体調を崩して亡くなられた高齢者の4人に1人は肺炎が原因で、中でも誤嚥性肺炎が多くを占めたといいます。災害時は断水などで歯みがきの頻度が減る傾向にあり、また食べ物や睡眠が不足して体力や免疫力が弱まり、飲み込む力も衰えやすくなります。そのため大勢の高齢者が誤嚥性肺炎を起こし、衰弱するなどで命を落としてしまったのでした。(参考:「災害時の避難所で、誤嚥性肺炎が多発したワケ。」Sunstar Suisse SA)
誤嚥性肺炎は歯みがきを基本とした口腔ケアを行い、口の中を清潔に保つことで発症する可能性を減らすことができると考えられています。歯みがきは歯や歯茎だけでなく、肺も、命も守ることにもつながっているのですね。
では、いつものように歯を磨いたりうがいをすることができないかもしれない災害時には、どのように口の中を清潔に保てば良いのでしょうか。
災害時の歯みがきは「無水」で!
3ステップで本格的なオーラルケアができる「無水ハミガキセット」
災害時の避難所のように水が貴重な環境下では、水を使わなくても口の中をケアできる「無水ハミガキセット」がおすすめです。
「もしもの時、ハミガキで救えるいのちがある。」をコンセプトにヤマトエスロン株式会社がNPO法人プラス・アーツと共同開発した「無水ハミガキセット」は、
・歯磨き粉がなくても表面の汚れを落とせる「ミニブラシ」
・歯と歯の間の汚れを取り除ける「フロス」
・歯ブラシで浮かせた汚れやお口の中全体をふきとる「ハミガキシート」
の3ステップで、水がなくても本格的なオーラルケアができるアイテムです。
ミニブラシの長さは10cm、避難所で手軽に使えるコンパクトさと、奥歯までしっかり届く機能性を両立する最小サイズに設計されています。水洗いできずに使い捨てることも想定し、ハンドル部分のプラスチック使用量を抑え環境面にも配慮されています。
オリジナルリーフレットで防災知識(口腔衛生)の向上も
災害時における口の健康リスクや歯みがきの大切さをかわいいイラストとわかりやすい文章でまとめたリーフレットもついています。リーフレットは阪神淡路大震災での被災と支援活動の経験をもとに歯科保健の重要性を発信し続けている神戸常盤大学客員教授の足立了平氏と、大手前短期大学歯科衛生学科教授の関根伸一氏といった口腔衛生のプロが監修しています。子どもからお年寄りまで、信頼できる情報を読んで学ぶことができます。
オリジナルリーフレット+救援物資が届くまでの3日間を想定した1人分が1セット。防災リュック(非常用持ち出し袋)にスッキリおさまるサイズにまとめられています。NPO法人プラス・アーツの防災グッズショップや通販サイト「楽天市場」から購入可能です。
まとめ
防災対策は食べ物や飲み物などの確保に気を取られがちですが、体力や免疫力が落ちやすい災害時こそ、衛生管理が命を左右することがあります。避難所で後回しにされやすい歯みがきですが、口の中の健康を守ることは命を守ることにもつながるため、ないがしろにはできません。特にご家族に高齢の方がいる場合、誤嚥性肺炎を発症して命を落とすリスクが非常に高いため注意が必要です。今回紹介した「無水ハミガキセット」などのオーラルケアアイテムをしっかり備えておきましょう。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000117002.html、https://plusarts.theshop.jp/items/72605770、