防災には「自助」「共助」「公助」という3つのキーワードがあります。
「自助」とは、日頃から家庭で災害に備えたり、災害時には事前に避難したりするなど、自分で自分の身を守ること。「共助」とは、地域住民同士で避難に協力したり、人命の救出や消火活動などを行うなど、周りの人たちと助け合うこと。そして「公助」とは、市役所や消防・警察による救助活動や支援物資の提供など、公的支援のことをさします。
自助・共助・公助が互いに連携することで、災害被害を最小限にできるとともに、早期の復旧・復興につながると言われています。
今回の記事では3つのキーワードの中でも「公助」、災害時に自治体が設置する「災害対策本部」の課題を解決するテクノロジー「緊急対策ソリューション」についてご紹介します。
公助の要となる「災害対策本部」
「災害対策本部」とは
災害が発生する、あるいは発生するおそれがあるときに、地域住民を守る役割を担うのが県や市町村などの地方自治体です。そして地方自治体が災害への対応を迅速かつ強力にすすめるために設置するのが「災害対策本部」です。
大きな災害が起こると、電気や水道、道路などのライフラインが断絶する可能性があります。
そんな状況のなかで、地方自治体では二次的被害の拡大を軽減したり、避難所で生活する被災者へ緊急支援物資を提供したりと、平常時とは異なる業務が次々に発生します。
そうした場合に、行政体制を平常時から災害対応体制へと切り替えることで、災害時に生じる特別な業務に職員たちが混乱せず、組織が一丸となって対応できるようになります。また、災害対策に関する情報を一元的に集約することで迅速な意思決定を行う目的も、災害対策本部にはあります。
「災害対策本部」の中心となる「災害対策本部事務局」の業務例
・災害対策本部・本部会議に関すること
・災害情報のとりまとめ
・防災関係機関との連絡調整
・防災対策実施の総括
など
災害の規模が大きく、地方自治体では対応が難しい場合には、国が「災害対策本部」を設置することもあります。
災害対策本部の情報課題
公的機関が迅速な災害対応を行う(公助)ために設置される「災害対策本部」ですが、災害時に集まる「情報」についてこのような課題が存在します。
- 地図を基盤にした情報集約が行えない
災害現場から写真や動画などの情報が送られてきても、その場所がどこかわからない(地図と紐づけしにくい)ため、状況把握や対応の協議に時間がかかる - 現場から集まってくる情報を整理しきれない
災害現場の状況は刻一刻と変わるため、災害対策本部には新しい情報が次から次へと集まり、意思決定の協議を行おうにも情報をまとめきることができないことがある - 情報の伝達方法がバラバラで、重要な情報の伝達が遅れたりする
電話や無線、メールなど情報の伝達方法が異なることにより、現場と本部で把握している情報に食い違いが生じ、適切な対応を取れなくなるリスクがある
このような災害時における情報の集約・整理・共有に関する課題を解決するために、株式会社ブイキューブ(本社:以下、ブイキューブ)が提供しているサービスが「緊急対策ソリューション」です。
“災害現場の今”を共有し、緊急時のオペレーションを強化!「緊急対策ソリューション」
「緊急対策ソリューション」は、災害時のさまざまな情報を複数のデジタルテクノロジーを用いて整理・俯瞰することで、災害対策本部が迅速な意思決定ができるようサポートをするパッケージ化されたコンテンツの総称です。
基本的に下記の3つのデジタルテクノロジーによって、災害対策本部の抱える情報課題の解決を実現します。
①リアルタイム情報共有システム「V-CUBE コラボレーション」
「V-CUBE コラボレーション」は、離れた拠点とリアルタイムでコミュニケーションが取れ、遠隔グループワークの業務改革に役立つディスプレイシステムです。
操作方法は画面をタッチするだけでよく、誰でも簡単に使いこなせます。
画面上で画像や映像などの資料をやり取りできるだけでなく、音声も送れます。不安定なネットワーク環境下や狭帯域下であっても会議やコミュニケーションを成立させるため、途切れにくく高品質な音声が遅れるよう設計されています。
最大のメリットは複数の拠点で同時に書き込みが可能なこと。
スマートフォンやタブレットなどさまざまなデジタル端末と連携することができるため、端末を持っていさえすればどこにいても情報の共有や把握、指示だしがスムーズに行えます。
作成したデータはデジタルデータとして保存ができ、対策会議の議事録などにも使えます。
②案管理地図システム「V-CUBE コミュニケーションマップ」
「V-CUBE コミュニケーションマップ」は、たくさんの情報を集約して表示し、複数の事案を視覚的にオペレーションできる電子地図です。
災害現場からモバイル端末で送られてきた写真や動画、テキストメモなどを、GPSを利用した位置情報にもとづいて地図上で確認することができます。
人員や車両などの現場対応リソースを管理したり、出動要請などの指示も地図上で行えます。
前述した「V-CUBE コラボレーション」や後述する「V-CUBE Board」と連携して利用することで、本部と現場間のさらに強固な連携を実現します。
③電子作戦テーブル「V-CUBE Board」
「V-CUBE Board」は、災害現場のリアルな情報を集約し、意思決定の質とスピードを向上させる実践型作戦テーブルです。
大きな液晶画面上にweb、写真、動画、表計算ソフト、ホワイトボードなど、さまざまな情報をカードのように表示し、画面を囲んで情報を見ながら協議ができます。
操作方法は液晶画面に触れて操作するタッチパネル式。
カードの拡大や縮小、コピー、書き込みなどが複数人で簡単に行えます。
大画面表示や整列表示なども自由自在。複数の情報を同時に扱い、簡単に比較検討ができるため、現場の状況把握や対策のための意思決定が行いやすくなります。
最大4台までサブディスプレイをつなげることができ、液晶テーブルの周りにいない職員にも情報共有が可能です。
複数台のデジタル端末を接続し、V-CUBE Boardにデータを投げ込むこともできます。ネットワークに接続すれば、遠隔地にあるデジタルデバイスとの情報共有や書き込みも行えます。
液晶テーブルにはキャスターがついています。
平常時から専用の緊急対策室を用意しておく必要はなく、災害時で会議室が使えないという状況でも、空いたスペースをどこでも会議所にすることができるので便利です。
緊急対策ソリューションが実現する「公助」
大規模災害の発生時、災害対策本部にはさまざまな情報が集まってきますが、状況は刻一刻と変化します。災害現場も広範囲にわたることが多いので、各地の災害状況を正確に把握した上での意思決定は非常に難しく、公助が適切に働かなくなるおそれがあります。
「緊急対策ソリューション」は集約された情報を整理することで現地の状況を的確に把握し、迅速な意思決定をサポート。さらに、指示事項を正確かつスピーディーに関係各所へ共有できます。
災害対策本部や支部・現場間が双方向でリアルタイムに情報共有できれば、災害発生後の初動から収束までがスピードアップ。地域の被害を最小限に食い止めることが可能になるでしょう。
まとめ
災害時の情報に関する課題を解決するブイキューブのデジタルテクノロジー「緊急対策ソリューション」。
2022年11月末には、行政の業務やサービスにおける課題・改善要望と、それを解決する民間企業等が有するデジタル技術提案をマッチングするオープンなプラットフォーム「YOKOHAMA Hack!」(運営:横浜市)にて、「災害時における迅速・円滑な状況把握と情報管理に向けた映像等の活用」のテーマで実証実験が行われることが決まりました。(参考:「ブイキューブコラボレーション&コミュニケーションマップ、横浜市が運営する「YOKOHAMA Hack!」に採択。災害時の映像コミュニケーションで実証実験を開始~緊急対策の迅速・円滑な対応を防災DXで推進~」株式会社ブイキューブ)
ブイキューブの公式サイトでも導入事例がたくさん紹介されています。興味のある方はぜひご確認ください。
参考:
災害写真の出典(又は写真提供):(一財)消防防災科学センター「災害写真データベース」、https://jp.vcube.com/、https://jp.vcube.com/solutions/scene/emergency、https://jp.vcube.com/news/release/20221128-1530.html