皆さんは「メタバース」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?メタバースは「Meta(超越)」+「Universe(宇宙)」を組み合わせた造語で、1992年にアメリカのSF作家ニール・スティーブンソンが小説の中で発表した概念。インターネット上に構築された仮想空間のことを指します。コロナ禍によるテレワークの普及や外出自粛などを背景にオンラインコミュニケーションのニーズが高まっている現在、メタバースを利用したサービスが注目を集めています。
今回は、防災分野での活躍も期待できるメタバースのサービスを紹介します。
現実世界にメタ情報を重ね、価値を生む「MUGHEN」
2022年8月1日、ALAKI株式会社/ALAKI XR株式会社(グループ本社:大阪市北区、代表取締役:山内 裕次)が「MUGHEN(むへん)」 というiOSアプリをリリースしました。
「MUGHEN」は、AR(拡張現実)×メタバースで無数のメタ情報を提供し、リアルとデジタルを有機的に融合させることを目的としたデジタルプラットフォームサービスです。
ARとは、スマートフォンやARグラスなどのデバイスを介して、現実世界にナビゲーションや3Dデータ、動画などのデジタルコンテンツを重ねて表示することができる技術のこと。
メタ情報とは、ざっくり説明すると、主役のデータに対して関連したり説明を添える付帯的な情報のことです。現実世界で例えるなら、人物に対する“自己紹介カード”や、店頭で販売されている野菜に対する“生産地や生産者などの商品カード”のようなものと言えるでしょう。
「MUGHEN」はARを通じて利用者へリアルタイムなメタ情報を提供し、単なる情報ではない「付加価値のある情報」の収集を可能にします。
文字の説明ではピンとこないかもしれないので、実際にインストールしたアプリの中身を見ていきましょう!
実際に「MUGHEN」をインストールしてみた!
お手元のスマートフォン(iOSのみ)でアプリをダウンロードしたら、名前とメールアドレス、パスワードで会員登録をします。会員登録もアプリの利用も無料です。
位置情報とリンクした空間に「デジタルコンテンツ」を設置・閲覧できる
任意の場所でアプリを起動すると自動的にカメラが立ち上がり、GPSから得られる「位置情報」とカメラに映った建物や看板から抽出した「視覚的特徴」をもとに、現実世界とリンクした正確な「空間位置」を割り出し、その場に対するデジタルコンテンツを提供してくれます。とはいえ、現時点ではリリース直後のため、既存のデジタルコンテンツはほとんどないようです。
また、ユーザー自身がその場所に関する投稿をAR上にして、他のユーザーへメタ情報を残すこともできます。
実際にAR上への投稿を試してみました。
空間へのピン留めは位置アイコンだけでなく絵文字も用意されています。
まるでSNSのようにリアルタイムな情報共有をAR上にできるのはおもしろいですね。
ユーザーが増えれば、街歩き中にスマートフォンをかざすと、誰かの投稿したピンや絵文字があちらこちらで浮かんでいるのが見れる世界になりそうです。
アイデア次第で可能性は無限!
「MUGHEN」自体はAR×メタバースのプラットフォームのため、使う人のアイデアやテクノロジーの組み合わせによってさまざまな分野で役立つと考えられます。
例えば、GPSを用いた観光分野でのガイド利用。観光客がスマートフォンをかざすと、その場所にピン留めされた歴史的な情報や他の観光客の口コミなどを取得できるようにすれば、現実世界での体験以上の価値を観光客に提供できます。
もうひとつ例をあげれば、小売の現場。店側が顧客へ商品情報を伝えたいとき、いまのところ、口頭での説明や商品ポップなどのアプローチをするしかありません。しかし、顧客が商品にスマートフォンをかざすだけで商品の詳しい情報が表示されるようになれば、店側の説明負担が減る上に、単に陳列されている時よりも商品の価値が伝わることで顧客の購買意欲が高まり、売上アップにつながります。さらに、高速・大容量、低遅延、多接続を実現する次世代ネットワーク5Gと「MUGHEN」を利用すれば、テキスト情報から動画まで、さまざまな情報を瞬時に表示させることができると考えられています。
上記のようなビジネス的な使い方だけでなく、一般ユーザーは「ARによる思い出の記録」といった、SNSのような楽しみ方もできそうです。公式サイトや公式SNSでは「イマ、ココに、あなたの思い出を」というフレーズでサービス案内がされています。
“防災”で「MUGHEN」はどう役立つのか?
「MUGHEN」公式サイトによると、防災分野においては「避難経路の案内」や「災害情報の伝達」などに役立つと考えられています。
情報を現実と融合させ、最適な避難をサポート
例えば、災害時は避難所へ移動する際に、「地図アプリを見ていても焦って道がわからなくなった」「地図アプリを元に避難所へたどり着いたものの、人がいっぱいで入れなかった」「ペット連れの対応ができない避難所で入れなかった」などといった問題が起こりがちです。
こうした場合に、複数のアプリや検索をして情報収集をすることもできますが、いちいちアプリを移動するのは面倒ですよね。「MUGHEN」であれば、ユーザーが今いる現場の風景を撮影するだけで、ARによる分かりやすい避難所への経路表示とともに、受け入れ状況などのリアルタイムな情報を得ることが可能です。
普段よりも心理的なストレスが高くなる時には、文字よりも画像のように、できるだけ分かりやすく可視化された情報が判断を手助けします。「MUGHEN」はスマートフォン越しに見える現実世界へそのままデータを落とし込むので、災害時の心理的ストレスを軽減し、適切な避難サポートが可能だと考えられます。
AIを用いてメタ情報をローカル化・パーソナライズ化し、正確な災害情報の伝達へ
多くの人にとってスマートフォンが身近な存在である現在、被災地のことを知りたい場合に「テレビよりもリアルタイム性が高い」「現場の人とコミュニケーションをとることもできる」という理由から、SNSなどインターネットで情報収集をするという方は多いのではないでしょうか。
しかし災害が発生すると、インターネット上では被災状況や被災者支援の情報などさまざま情報が大量に飛び交います。不安な状況が続くなかでは何が正しいのか、どれが最新なのか判断するのが普段よりも難しくなり、デマや誤った情報が拡散されやすくなります。
これに対し、「MUGHEN」にAIを掛け合わせ、災害が起きた地域には必要なメタ情報だけに絞って表示させるよう設定をすれば、メタバース上でのリアルタイムなコミュニケーションを守りつつ、デマや誤情報の伝達を無くし、人々の混乱を防げるようになるかもしれません。
まとめ
一般ユーザー向けの「MUGHEN」アプリはまだリリースからまもないため、これからのアプリアップデートによる新機能追加に期待が高まります。
また、メタバースを使ったビジネスが注目を集める今、さまざまな企業や自治体とのコラボレーションが、今後次々と発表されていくことが大いに考えられます。防災分野での活躍を含め、これから注目していきたいテクノロジーですね。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000092521.html