日頃から防災のために、あなたは何を備えているだろうか。地震の時に家具が倒れないよう固定したり、避難所の確認や連絡手段を家族と決めていたり。
最も一般的なのは「非常用持ち出し袋」だろう。懐中電灯や衛生品、日用品、飲料水、そして食糧などが入っていると思う。
今回はその防災の「食糧」に注目したい。
災害時の「食」問題
引用:西日本新聞
東日本大震災では避難生活の栄養面が問題視される
画像のグラフを見てほしい。これは東日本大震災で生き残った人々の「食と栄養」に関するものだ。
震災発生後の1ヶ月後、国立健康・栄養研究所(東京)にある国際災害栄養研究室チームが、被災地のある市で避難所(69施設)の食事内容を調査した。日本人の食事摂取基準(2010年版)で示されているエネルギー及び各栄養素の摂取基準値をもとに、避難所で提供されていた食事についてグラフで過不足を表した。
4分の1の避難所で炭水化物が過剰に供給されており、おかずや栄養を補うための食品が明らかに不足していた。カップ麺や菓子パンなどが配られたり、被災で下水道が使えないことから、カップ麺の汁を捨てずに飲み干すよう求められたケースもあったとされる。
すべての避難所が該当するわけではないが、食事によって逆に体調不良を引き起こしかねない事実があった ことは非常に問題だろう。
せっかく助かった命でも、避難生活を由来とするストレス・ 疲労、感染症・風邪、エコノミークラス症候群、血圧・血糖値の悪化、下痢・便秘、口内炎、肥満、虫歯など、多岐にわたる健康問題が生じる可能性があり、調査チームはその多くが「災害下での食事」に関係していると指摘。食事を改善することで防ぐことができるものも少なくないという。
こうした問題の解決には避難所を運営する側の改善はもちろんだが、各家庭における食の備えがかなり関わってくる。
災害が発生したら、自治体の運営する避難所に身を寄せれば、物資の提供や炊き出しが行われるはず。そんなイメージをあなたが持っており、食の備蓄はあまり必要ではないと考えているなら要注意だ。
避難所で自治体が住民全員分の食をまかなうことは難しい。自治体は、各家庭がある程度の備蓄をしている前提で、自宅を失うなどによりやむなく避難所に身を寄せる予想人数に合わせて食糧品などを確保するからだ。
災害により家屋を失っていない人は、避難所ではなく自宅で生活していく場合がある。その際、自宅に蓄えがなければ衰弱してしまう。かと言って避難所が良いかといえば、先程のデータのように、場合によっては健康を害する恐れがある。
自分の健康を守るには、各自で「食の備蓄」をしっかりしておくこと。その重要性が分かっていただけただろうか。
防災用食糧の備蓄は「1週間以上」
南海トラフ巨大地震をきっかけに、以前までは3日分で良いとされていた非常食の備蓄量が見直された。現在は「1週間分以上」の備蓄が推奨されている。災害発生から1週間は、ライフラインが止まり、余震も多い時期。復旧や物資が外から届く前のその期間をめどに、備蓄したものを食べていくイメージだ。
しかし、備蓄推奨期間が長くなったことにより、別の問題も生まれてきた。備蓄食品の偏りによる栄養不良、そして消費期限切れなどの問題である。
一般的に備蓄用食品といえば缶詰やレトルト食品が挙げられる。最近は栄養に配慮したものも増えてきてはいるが、野菜の少なさや塩分の多さは避けにくい。そして長い間食べるとなれば味に飽きたり、それが食欲と体力、免疫力低下の元となる。
栄養が摂れ、おいしく食べ続けられる災害食。生き延びた先で確実に命を繋ぐには、そういう工夫も必要だ。
災害時の食をおいしく健康的に
引用:@press
料理動画サービスアプリ「クラシル」が手掛ける防災用レシピ
前置きが長くなってしまったが、災害時の食問題に取り組むプロジェクトを紹介する。
日本赤十字社とクラシル(dely株式会社)が2019年に立ち上げた、食の備えプロジェクト「Sonaeru Gohan」だ。
クラシルは「くらしをおいしく、あたたかく」をコンセプトに、管理栄養士が監修した「かんたんにおいしく作れるレシピ」を提供する料理レシピ動画サービス。
国内に数ある類似サービスの中でも、
- 管理栄養士など専門家が監修
- すべてのレシピに1分程度の動画付き
- 40000件近いレシピが掲載され、毎日更新
という特徴があり、栄養バランスと味、そして直感的に調理法がわかることから多くのユーザーに支持されている。iOS・Android用のアプリは、2021年2月に累計ダウンロード数が2,800万を突破。料理レシピ動画アプリの中で、月間ユニークユーザーやアクティブユーザー、ダウンロード数が国内No.1を記録した(※クラシル自社調べ)。
そんなクラシルが関わる「Sonaeru Gohan」プロジェクトでは、食を通じて防災・減災を身近に考えてもらうために、在宅避難時の避難食や、食の備え、心構えなどをレシピ動画やコラムで紹介している。
レシピは災害発生後の状況に合わせ、在宅避難時の限られた環境や食材でもストレスなく料理できるよう、備蓄用として知られる食品をアレンジ したものだ。また、災害発生から数日は、気持ちは落ち着いてもインフラが復旧しないことでストレスを抱えがちになることを見越し、“日常”を感じられるおいしいメニュー にこだわって作成されている。
2021年は第三弾!テーマは「備蓄と消費」
2019年は「在宅避難時の食」をテーマに、カセットコンロで炊くご飯や、レトルトでもタンパク質を取れるミートソースなどを紹介。
2020年はハウス食品と日本製粉が参画し、ハウス食品の「咖喱屋カレー」や「北海道シチュー」、日本製粉の「オーマイ パスタ」や「ミートソース」などを使った災害食を紹介した。
そして第三弾となる2021年は「備蓄と消費」をテーマに防災用リストを公開している。
このテーマを取り上げた背景には、クラシルがアプリユーザーを対象に行ったアンケート(2021年2月実施)の結果が関わっている。
アンケート内容は「防災時の食への不安や悩みごと」について。回答者はおよそ6000名だった。
食糧の備蓄に関する質問に、4割強が「備蓄をしていない」と答えた。備蓄をしている人は主に「保存のきくレトルト食品」や「缶詰」を用意しているものの、同時に「レトルト食品の味に飽きる」という声を寄せた。
このことからクラシルは、備蓄用として知られる食品の多くが単身者や2人世帯にとっては使い切るのが難しい ので、単身・2人世帯が増えている現在、備蓄をしない層が多く現れているのではないかと考えた。
そうして今回、余らせてしまいがちな 備蓄商品の消費 をテーマとして設定。味に飽きがこないよう、あえて特別な食材を必要とせず、自宅にある常温保存が可能なもので作る災害用レシピが新たに作られた。
さらに、アンケート内で「災害に対して不安に感じること」の回答として最も多く挙げられたのが「ガス・電気・水道の停止」だったことから、ライフラインが停止した場合に備えておくと便利な日用品や、日常から気をつけたいポイントをわかりやすくまとめた「お役立ちコラム」もレシピと同時に紹介している。
実際に「防災用リスト」を試してみた!
まずはアプリをダウンロード
この防災用リストはインターネットにあるクラシルの公式サイトで見ることができるが、おすすめは専用のアプリということなので、実際にクラシルのアプリをダウンロードして見てみたい。
筆者の携帯はiphoneなのでApp Storeからアプリを入手。Android利用者はこちらからダウンロードしてほしい。
ダウンロードが完了すると、クラシルのロゴが入ったアプリが表示された。
「カテゴリ」から「レシピリスト」を選択
アプリを開くと、数々の料理写真が並んだページが現れる。画面の上部には新着・和食・洋食・中華などカテゴリがあり、スライドして興味のあるものを選択できる仕組みだ。
そのカテゴリの中にある「レシピリスト」を選択。ここにはテーマごとにレシピがまとめられている。
クラシルは更新頻度が高いので、しばらくスクロールが必要なものの、根気よく探していると、「日頃から備えておきましょう」というレシピリストが見つかる。
レシピ×コラムで防災を学ぶ&実践
まずは「災害時用リスト」をタップ。
このような画面が開かれ、レシピがいくつか閲覧できる。限られた状況下で最低限の食に関する工夫の例が並んでいると感じた。
レシピ欄の横にある「お役立ちコラム」をタップすると、
このように3つの画像が並んでいる。
タップして開いてみると、画像を左右にスクロールしながら解説情報を読むことができる。まるでインスタグラムのような仕様だ。
続いて元の画面に戻り、「日常に防災を 備蓄&消費」の画像をタップする。
今度は先ほどと異なり、バリエーション豊かなレシピが並んでいる。缶詰やレトルトの他に、海藻や高野豆腐、切り干し大根などの乾物やインスタントラーメンなどの食品を、簡単な工夫でおいしく仕上げる魅力的なラインナップだ。
お役立ちコラムでは、今回クラシルが実施したインタビュー結果をもとに、食料品の備蓄と消費を意味する「ローリングストック」が詳しく紹介されていた。
災害下で必要な栄養が摂れるスープを作ってみた!
実際に「備蓄&消費」のメニューを作ってみることにした。
選んだのは「お豆たっぷり 切り干し大根とお豆のスープ」。何かと役立つので買い置きしている人も多いであろう切り干し大根と、缶詰で売られているミックスビーンズを使うレシピだ。
切り干し大根は整腸効果のある食物繊維が多く含まれており、カルシウムやカリウム、鉄分などのミネラルとビタミンB1、B2などがギュッと詰まった栄養の宝庫。ミックスビーンズは畑の肉と言われる豆類なのでタンパク質が摂れ、こちらもビタミンB群やミネラル、食物繊維が多く含まれている。
災害時に補給を優先すべきなのは、まず体を動かすエネルギー源となる炭水化物。次に体を作るタンパク質。そしてビタミンだ。特に B1、B2、C といったビタミンは体内にストックがしづらく、他のビタミンに比べるといち早く欠乏する。ビタミンB群は疲労を回復させたり体内で糖質をエネルギーに変える働きがあり、B1は欠乏すると「脚気」を引き起こす。ビタミンCは免疫力に貢献する。
また、避難生活で食事量や野菜量が少ないと便秘に悩まされることが多くなる。食物繊維も災害時こそ必要な成分だ。過多になりがちな塩分や水分の排出をサポートするカリウムも重要だろう。
そうすると、この切り干し大根と豆を使ったスープは、なるほど「災害用」としてよく考えられている。管理栄養士監修のクラシルレシピ。栄養面の配慮に関心した。
しかも調理の時間は10分。切り干し大根は水につけて放置し、材料を入れて煮込むだけなので、ビックリするほどストレスがない。
実際にできたスープは、やさしい味わいに豆のほくほく感や切り干し大根のかみごたえなど食感の変化もあり、満足度が高かった。
いままでの防災レシピを閲覧したり、食材で探せるのもポイント
今回「備蓄&消費」をテーマに追加されたレシピリストを見てきたが、いままでに公開されてきた防災レシピも、もちろんデータが残っている。
また、検索欄で自分が備蓄用として買っているものを入力すれば、それを活用したレシピを見つけることも可能だ。
試しに非常食として筆者が備蓄している「乾パン」を検索してみた。
そのままボリボリと食べる以外ではミルクに浸すくらいしか筆者は思い浮かばなかったため、ティラミスなどのスイーツや、普段から食べたいと思えるおいしそうなレシピ の数々に驚きが隠せない。
クラシルアプリのおかげで、すでに持っているアイテムも備蓄に使えるかどうか検討できるだけでなく、レパートリーにも気軽にこだわれそうだ。
普段からクラシルアプリを活用して防災に備えよう
備蓄食品のアレンジ方法や、普段の食卓でも使えるメニューが災害時に役立つものであると知っておくことは、いざというときに大きな効果をもたらす。
例えば、今回作ったスープを日頃から食べるようにしていれば、もしもの時に環境が大きく変わってしまった際、義務的に食事をするのではなく、食べ慣れたものを口にすることで心が落ち着く効果が見込める。実家を離れて長い間外食などをしているとき、ふと実家に帰って食べる味噌汁の味に癒されたり、海外の長期旅行中に日本食を食べてホッとするような感覚に似ているかもしれない。栄養面でも元気を維持する成分がたっぷり入っており、体と心の健康を支えてくれるだろう。
まとめ
防災リストを提供するクラシル。栄養面で信頼ができ、何より写真や動画で分かりやすく、おいしそう!と思えるのが良い。
もちろん普段の料理時にも役立つので、アプリをダウンロードするのに損はない。クラシルアプリを活用し、日常の食卓に防災用メニューを取り入れてみてはいかがだろうか。