規模の大きな自然災害が発生する度に、災害への意識は高まりつつある。中でも、災害時の情報伝達はどの地域でも課題となっている。私たちは、どこでどのような情報を受け取れば良いのか。ヤフー株式会社が提供する、災害時に必要な情報を迅速に届ける「災害協定」が実現している内容と今後の展望について取材した。

災害協定の役割

「災害協定」とは、地方公共団体(自治体)間、または自治体と民間事業者、関係機関との間で締結される、災害発生時における応急復旧活動に関する協定だ。

Yahoo! JAPANの災害協定は、人からの物資ではなく、災害時に自治体から発信する緊急情報へ住民がいつでもどこでもアクセスできるよう、情報支援を受けることが可能になる。締結先の自治体は900を超え(※)、費用は全て無料。(※2020年2月末時点)

災害協定の3つの主要ポイント

Yahoo! JAPANの災害協定の主な内容は以下の通り。

(1)キャッシュサイト(別の複製サイト)を用意

キャッシュサイトは、自治体のサイトをキャッシュ(コピー)したものを、Yahoo! JAPANのサーバー上で表示することで、自治体のサーバーへのアクセスを分散する。キャッシュサイトにユーザーがアクセスすると同時に、Yahoo! JAPANが自治体サイトへアクセスし、キャッシュした情報を表示する。一度キャッシュされた情報は1分間保持され、1分経過後に他のユーザーからアクセスがあれば新たにアクセスしキャッシュし表示する、ということを繰り返す。

(2)避難場所マップを用意し、地図で公開

避難場所など、自治体から提供されたデータを地図上に反映。また、Yahoo!防災速報と連携し、災害種別に合わせて避難場所を提示。大規模な災害では「被災地情報MAP」を作成し、避難所、通行止め情報などの必要な情報が掲載される。

(3)自治体からの緊急情報を、Yahoo!防災速報アプリなどで直接配信

自治体から緊急情報を、「Yahoo!防災速報」を通じて、地点登録をした利用者および位置情報を使い現在そのエリアにいる利用者に配信できるサービス。

災害発生時の情報配信に関する課題を解決する

 従来の防災無線や防災情報メールでの情報配信には限界があり、リアルタイムかつより多くの住民への情報配信が課題になっている自治体は多い。

自治体の年末の議会でも、台風19号で自治体ホームページが見えない、今後の情報配信はどのように考えているのかが、大きなテーマとなっている。

そんな中、緊急地震速報や豪雨予報、避難情報などをいち早く知らせる「Yahoo!防災速報」は、自治体のインフラに依存しないことが強みだ。

台風15号,19号の際に停電が起き、市役所の予備電源がなくなったとしても、インターネットに繋がる端末があれば、そこから情報を配信し、住民は情報を受け取ることができる。

また、住民に対してだけでなく、来訪者にも位置情報を利用した情報配信が可能。自治体にとっては、災害協定を結ぶことで、投資ゼロで災害時の情報関連の問題を解決できるのは大きなメリットだ。

全国の自治体と締結を進める

「全国の自治体様の締結を進め、市区町村の人口を積み上げ、全人口の90%を2025年までに達成することが目標」と、ヤフー株式会社 SR推進統括本部 CSR推進室 災害協定プロジェクトマネージャー関口 和明氏は話す。

現在Yahoo! JAPANでは、データソリューション事業をスタートさせ、過去の災害をデータ化し、データに基づいた防災計画を見直せる取り組みを準備しているという。

また、ITを使って自治体と連携し、地域の防災教育を一緒にできないかと考えているとのこと。

「全国の自治体と災害協定を結び、集まる情報を増やし、広域でより公益な情報を配信できるようにしていきたい」(関口氏)