山岳遭難や広域災害が発生したとき、人の力だけで救助を行うことに限界がきている。実際に、2016年に発生した熊本地震では、被害状況の把握や被災者人数の把握に時間がかかり、混乱が生じてしまった。
そんな災害現場で、強力な即戦力として期待されているのが、ドローンだ。今回は、そんなドローンを活用した「レスキュー支援システム」について紹介する。
山岳遭難や広域災害での課題は
2017年3月、内閣府から地方公共団体向けに、災害時受援体制に関するガイドラインが発表された。このガイドラインの中では、最初の行動として、大規模災害発生時には行方不明者の特定と、救助を待つ被災者の状況把握が重要とされている。
しかし、山岳遭難や広域災害が起こったとき、従来の方法では、迅速な救助活動が行えない場合がある。その理由として、被災者の発見までに時間がかかる点があげられる。例えば山岳で災害が発生した場合、警察や山岳捜索隊、自治体職員らが集まって、情報収集・集約をすることから始まる。そのため、時間と労力が多くかかってしまっていた。
またすべて人の手で行うため、レスキューを行う側の二次遭難の危険が伴うことも課題となっている。
災害現場での被災者発見にドローンが活躍
山岳遭難や広域災害が発生したとき、人の手だけでは被災者を発見し、救助するのが難しい。そんな課題を解決するため、NTT-ATシステムズ株式会社(本社:東京都武蔵野市)と株式会社アイ・ロボティクス(本社:東京都新宿区)は共同研究を開始した。
その研究内容は、ドローンを使ったレスキュー支援システムの実用化だ。ドローンに「耳」と「目」の強化機能を付けて、災害現場で活用しようと試みている。そうすることで、人間では発見が困難な領域でも、安全で迅速に、正確な情報収集が可能になると期待されている。
具体的な研究内容として、2つの研究があげられる。
1つ目は、「耳」の機能。ノイズキャンセリングだ。ヘリコプターの側など高騒音の環境の中でも、被災者の助けを求める声をキャッチしやすくなることを目的としている。これにより、映像だけでなく音の情報を使った情報収集が可能になる。
2つ目は、「目」の機能。大量の空撮画像を簡単な操作で、高速に解析できる機能だ。情報収集の手段としてドローンを使用する場合、大量に空撮された画像を分析して、被災者を発見する必要がある。その操作を簡易にすることで、捜索者の負担を減らし、被災者発見のスピードを上げることが可能になる。
2017年12月から、ドローンの「耳」と「目」の機能を強化するための実証実験が行われた。場所は、茨城県河内町にある「ドローンフィールドKAWACHI」だ。ここはドローンに関わる全ての人と技術を集約する国内最大級の総合施設となっている。
災害現場でドローンが活躍する未来
現在、実証実験を終えて、さらにドローンを使ったレスキュー支援システムの実用化に向けた研究が進められている。災害現場で、人の力だけでは見つけられない被災者の発見が、ドローンを使うことで、迅速になり、より多くの救助活動が可能になることが期待されている。こうしたドローンの活躍場面は今後ますます高まりそうだ。