自治体が災害などの緊急情報を伝える手段として、いまポケベルの電波が注目されているようだ。

主流なのは、防災行政無線という電波を用いて、屋外スピーカーで放送するやり方である。しかし、屋外スピーカーではすべての住民に伝えられるとは限らない。

そこで今脚光を浴びているのが、90年代にピークを迎えたポケベルの電波である。

ポケベルとは


そもそも若い世代の人たちはポケベルとは何かよく知らないだろう。

簡単に説明すると、1992~1996年頃に大流行した、受信のみ可能な無線通信端末である。ポケベルからメッセージを送信するには固定電話からの操作が必要で面倒だったため、携帯電話の料金が下がるとともに、ポケベル利用者の数は減り始め、2000年頃にはほとんど携帯電話に取って代わられた。

受信専用機器など、携帯やスマホが普及した現代では考えられないだろう。しかし、ポケベルの強みは、まさに「受信」機能に特化しているところにあるのだ。

ポケベル電波が防災行政無線に比べて優れている点は主に3つある。

ポケベル電波がなぜ伝わりやすいか

まず1つ目は出力が大きいこと。出力が大きいということは電波がより遠くへ届くということを意味する。

2つ目は、受信機がデータを受け止めやすいということ。ポケベル電波で伝わるのは音声ではなく文字だ。受信機で文字としてデータを受け取ったあと、音声に組み換えるという仕組みになっている。文字はデータ量が少なくて済むので、受信機にとってみれば音データに比べて受信しやすい。

そして3つ目は、周波数が約1mで、ちょうど家の窓を通過しやすいサイズだということ。防災行政無線の周波数は約5mだが、これは波長が大きすぎて、家の窓を通り抜けることができない。また、スマホの周波数は約10cmだが、これだと小さすぎて、窓の材質に遮られてしまうのだ。

自治体の導入状況


このポケベル電波を利用した機器は、今のところ個人に販売はしておらず、各自治体と契約し、その自治体が住民に販売および貸し出しをしているようだ。

東日本大震災以降、このポケベル電波を取り入れる自治体が増えたという。現在では、全国で27つの自治体が導入している。ポケベル電波の受信機はこれまでの受信機に比べ安価であることも、自治体がポケベル電波を選ぶ理由だと思われる。

例えば、愛知県では豊田市が導入しており、1世帯につき1台、3000円で希望者に
販売している。また、1世帯につき1台を無料で配布している自治体もある。

まとめ

ポケベル電波であれば、これまでよりも確実に住民に災害情報を伝えることが可能になる。

ここ1ヶ月だけでも頻繁に災害が起こっており、あなたの町にいつどんな災害が起こってもおかしくない。災害が起きてパニックになってしまったとき、いま自分がすべきことを教えてくれる自治体からの情報は、非常に重要になる。

また、自治体が積極的に導入を進めていくことで、住民の防災意識を高めることも大事だ。