大規模な災害が起きたとき、「物資が足りない」という報道がよく見受けられます。しかし、近年はこのような報道を見た企業/団体/個人の方などから善意で送られた支援物資が、被災者には必要ないものであったり、受け入れ側の管理負担を増やしていたりという事例も耳にします。
困っている人々に対し良かれと思ってしたことが、かえって現場の負担になれば本末転倒ですよね。しかし、外部からの支援は現場にとって必要不可欠なことであるのは間違いありません。特に、たくさんの物資を届けられる“企業”や“団体”は災害支援において大きな社会的役割を担っています。
災害時の物資不足を確実に解決していくには、一体どうすればいいのでしょうか。
今回ご紹介するサービス『Good Links(グッドリンクス)』は、災害支援をしたい企業や団体の方々にとって良い選択肢のひとつになるかもしれません。
被災地への物資支援はミスマッチが起こりやすい
災害時において「物資が足りない」という問題は、もともと用意していた物資が少なかったからという理由だけでなく、物流の滞りが原因で生じていることが考えられます。
例えば、2018年に起きた平成30年7月豪雨の際、被災地では土砂災害による道路の寸断や停電の発生でライフラインや交通インフラが一時的に麻痺し、県外からの援助はもちろん地域内でも物資を支援でき「平成30年7月豪雨の概要」内閣府 防災情報のページ)
交通網の復旧後には物資不足が報道されていたこともあり、大量の救援物資が被災地へ届くようになりました。しかし、その頃すでに被災地の状況は変わっており、被災当初であれば役立っていたであろう物も不必要になっていました。そうした物資は現地での管理や処分に手間がかかるため、個人などからの物資受け入れを休止した地域もありました。(参考:「被災者ニーズとのミスマッチ、新たな課題-供給過多の物資、保管費かさみ「第2の災害」に」産経WEST,2018-07-24)
このような事例は水害だけでなく、2011年に起きた東日本大震災や2016年の熊本地震でも起こりました。支援をしたいという全国各地の希望者に対し、混乱の続いている現場が新たな支援者と連携することが難しく、被災者ニーズのミスマッチが相次いで発生したそうです。(参考:「東日本大震災の災害対応における問題点等について」内閣府 防災情報のページ,「熊本地震 ボランティア・物資、焦らないで」毎日新聞,2016-04-15)
物資不足に対し、現場の状況を把握せずただ物を送るだけでは、逆に被災地を困らせてしまいかねません。被災者のタイムリーなニーズを知ることが、確実な支援をするために欠かせないことだと言えるでしょう。
被災者の”欲しい”を現場へ届ける!企業向けマッチングサービス「Good Link」
「Good Link」は、災害などが原因で物資の不足に困っている人々を支援する団体と、自社商品やサービスで社会貢献をしたい企業をつなぐマッチングプラットフォームです。
デジタルプラットフォームを通じた支援の仕組みづくりに取り組む公益社団法人Civic Forceのコレイルプロジェクトチーム(代表:根木佳織[所属:公益社団法人Civic Force])が、2022年7月1日にリリースしました。
使い方は、まず製造業者、小売業者、自治体(災害備蓄品)などの企業が物資やサービスの情報をGood LinksのWebサイトに登録をします。その登録情報一覧から、生活困窮者支援や災害支援の分野で継続的に活動を行っている団体が必要な物資やサービスを選択し、企業から受け取っていく仕組みです。
支援団体が「今、現場ではこういう物が無くて困っている」というリクエストを登録し、それを見た企業がニーズに応じた商品やサービスを提供することもできます。
会員登録制・審査制で信頼できるやりとりが可能
Good Linksの利用は無料ですが、会員登録が必要です。
サービスを利用したい企業や団体は、運営事務局の審査で選ばれた“特別協力会員”から「招待コード」を発行してもらう必要があります。身近に特別協力会員がいない場合は、運営事務局へ問い合わせて審査に合格すれば招待コードがもらえます。
誰でも利用できるようにするのではなく、しっかりと利用制限を設けることで、信頼できる企業や団体のみの安心したやりとりが可能になるそうです。
サービス誕生の背景
Good linksの立ち上げ企業である公益社団法人Civic Forceは、2009年から国内外で災害支援活動に取り組んでいます。活動をするなかで、企業などからの支援物資が現場のニーズに合わなくて余ったり、「必要なところに必要なものを届けるのが大変」という被災地の課題を長年感じていたそうです。
大規模な災害が起きたとき、被災した人へもっとスムーズに支援物資を届けられないだろうかーー。そんな思いから着想されたのがこのGood Linksでした。
平時での活用を通じ緊急時の対応をスムーズに
サービス誕生の発端は災害支援であるものの、Good Linksは災害時にしか利用できないわけではありません。
貧困・孤立や廃棄ロスを含む環境負荷など、さまざまな社会問題を解決したい企業や団体による平時での活用も推奨しています。
その理由は、国内で災害が頻発する中でニーズに合わせた支援をタイムリーに届けるために、災害時だけでなく日頃からさまざまな企業や団体がつながりをもっていることが大切だと考えているからだそうです。
平時からもGood Linksが使われることで、企業と支援団体による民間の支援ネットワーク、地域ネットワークの構築が期待されます。
まとめ
SDGsなどへの関心が社会的に高まっている今、「自社製品やサービスで社会貢献がしたい」「廃棄ロスなどに悩んでおり、なにか活用できないか」「災害が多発する国内で支援活動をしたい」と考えている企業は多いと思います。
そうした企業と物資不足で困っている現場や支援団体双方の悩みを解決するプラットフォームとして、Good Linkは今後注目を集めていきそうです。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000102713.html,https://www.bousai.go.jp/fusuigai/suigai_dosyaworking/pdf/dai1kai/siryo2.pdf,https://www.sankei.com/article/20180724-HL3MGIBTVNIVBI224Q2VYK4ZZI/,https://www.asahi.com/articles/ASL7C5357L7CPTIL027.html,https://weathernews.jp/s/topics/202104/150225/