「ロボティクスで、世界をユカイに。」を掲げ、数多くのコミュニケーションロボットやIoTプロダクトを企画・開発するユカイ工学株式会社が、防犯対策やセキュリティ、警備のセコム株式会社と一緒に、大阪府大阪市城東区森之宮地域の高齢化における課題に対して、コミュニケーションロボット「BOCCO(ボッコ)」を活用した防災・見守りサービスの実証実験を行いました(協力:社会医療法人大道会・森之宮病院)。
コミュニケーションロボット「BOCCO」とは
BOCCOは、ユカイ工学株式会社が開発した小さなロボットです。
高さは19.5cm、重さは220gで500mlのペットボトルより小さく、本体はやわらかな質感のABS樹脂でできています。
“座敷わらし”のようにそこにあると幸せを呼ぶような存在になればという願いから、東北・秋田の方言で子どものことを「ボッコ」ということに由来し、名付けられました。
基本的に音声メッセージのやりとりをするというのが主な機能です。
BOCCOの利用者がBOCCOへ話しかけると、遠方にいる専用アプリをスマートフォンなどで持つ人が、音声メッセージや文字として受け取ります。スマートフォンからテキストや音声で返答をするとBOCCOが読み上げ、BOCCOの利用者へ返事が伝わるという仕組みです。
小さな子どもや祖父母などのスマートフォンの操作ができない家族とも簡単にコミュニケーションをとれることから、家族とつながるコミュニケーションロボットとして展開されてきました。
大阪府が、BOCCOを防災・見守りサービスに活用する取り組みを実施
2021年12月〜2022年3月31日まで、地域課題を抱える市町村と企業・団体が共同してソリューションやサービスの実証・実装を進め、課題解決につなげる取組を推進する「大阪スマートシティパートナーズフォーラム」の補助事業として、大阪府森之宮地域で実証実験が行われました。
ひとり暮らしの高齢者(70代男性2名、80代女性1名)へBOCCOを利用してもらい、セコムのオペレーターが気象・防災情報の発信や健康状況のヒアリング、買い物補助サービスなどをBOCCO経由で実施しました。
大阪府 森之宮地域とは
高齢者が32.6%、独居率が47.7%にのぼる大阪府の森之宮地域(大阪府大阪市城東区地域別高齢者数データ(65歳以上)【平成29年4月~平成30年3月】)では、高齢化に加えて近年はコロナ禍の影響もあり住民間の接点が減少しており、大規模災害が発生したときの避難誘導が地域課題となっていました。
各個人へ効率的にサポートをするため、ICT(=情報通信技術)を活用した防災・見守りサービスが自治体によって検討されたこともありました。しかし、森之宮地域では住民のスマートフォン利用率が40%未満で、特に高齢者(特に80代以上)への展開が困難という状況から、デジタルインターフェイス以外のツールが模索されてきました。
実験の結果は?
実証実験後には、①以前よりも情報伝達の量が増えたか、②防災の意識が高まったか、③誰かとつながっている感覚が増えたか、をアンケートで取得しました。
BOCCOを提供するユカイ工学株式会社は、今後も生活者に寄りそう情報発信や個別のサービス、また買い物弱者に対するサポートを含め、地域課題の解決に向けてモニターを継続していくとのことです。
まとめ
近年進むICT化でさまざまなことが便利になっています。一方で、情報共有手段の主流となっているスマートフォンを持っていなかったり、デジタルデバイスを使い慣れていないという方にとっては不便さや課題は解消されない状態です。
地域の防災については、逃げ遅れないよう住民同士が声をかけて助け合う「共助」の重要性が増しており、近所住民、自主防災組織や家族からの声かけが避難のきっかけになったという事例も数多く報告されています。その反面、高齢化や独居率の高い地域では防災情報や避難のきっかけを得られる機会がなく、被災者が増える傾向があります。
話しかけるだけ利用でき、声で情報とつながれるBOCCOは、情報保障や孤独の解消につながる画期的なサービスといえるでしょう。今回の実証実験をもとに、BOCCOによる防災・見守りサービスの全国各地への実施や普及が期待されます。
参考:https://www.bocco.me/,https://www.bocco.me/news-entry/4424/,https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000164.000015618.html