ここ数年、高齢化の高まりや医師不足により救命救急の現場はより慌ただしさを増している。現場では、一分一秒が患者にとって重要となっており、そんな中で医療現場においてより効率的に心臓マッサージを行える装置が、今回紹介する「LUCAS2」である。

LUCAS2とは?

LUCAS2は、CPR(心肺蘇生法)をサポ-トする為に開発された。寸法57cm(高さ)×52cm(幅)×24cm(奥行き)、重量約7.8kgで非常に小型の機器であり、人間の心臓マッサージと同じように胸骨圧迫を行う。

患者に装着するのに要する時間は20秒以下であり、治療開始までの時間が短いことは大きなメリットである。
また、外部電源に接続すれば連続して利用可能なので、面倒な充電が不要だ。

救急隊員は両手が自由になり他の救急活動に集中できるため、救命救急の現場においては非常に有用なアイテムである。

「LUCAS2」の性能

画像:PYISIO CONTROL公式ホームページのスクリーンショット

胸骨圧迫は、約5cm以上、6cm未満の圧迫深さや、100〜120回/分の頻度がベストであるが、人間が圧迫を行うと多少間隔がずれたりすることもある。
一方で、LUCAS2は一定の間隔と深さで圧迫するため、人間が行うよりもより正確な胸骨圧迫を行うことができる。
その結果、血行動態が改善すると共に、その使いやすさと救命処置効率の向上によって高く評価されている。

また、LUCAS2はカテーテル治療の最中のように、通常では胸骨圧迫が行えない状況下でも利用できるのも魅力である。

実際の活用事例


LUCAS2は現在、病院や消防署での利用が進んでおり、その中のいくつかの事例を紹介したい。

JCHO九州病院では、高齢化に伴う救急患者の増加に対して対応できていない状況が続いていた。そんな中、「LUCAS2」を導入し看護師に救急治療の補助をさせたことで、マンパワー不足の解消に寄与している。

また、東海大学医学部付属病院においてドクターヘリによる移動の際にも有効活用されている。通常ドクターヘリでは機内で大きな揺れが生じるため、人間による胸骨圧迫は行いづらいが、「LUCAS2」では揺れた状況下においても問題はない。また、1回の充電で45分間継続して利用できることも、ドクターヘリにおいて使い勝手の良い大きな要因となっている。

会津若松消防署では、病院までの搬送の間でこれまでどうしても胸骨圧迫の中断を回避できなかった。しかし、救急現場でLUCAS2を傷病者に装着することにより階段や狭い通路などでの搬送時も、絶え間なく質の高い胸骨圧迫を実施することが可能となった。現在は、全ての心肺停止症例でLUCAS2を持参している。

今後の医療現場において一層の活躍を

以上が、最新の救命救急の場で活躍している自動心臓マッサージ装置「LUCAS2」の説明である。

医療現場における人手不足は今後も加速すると考えられており、より手軽に正確に治療するための手段が今以上に求められる。あくまで「LUCAS2」は一例に過ぎず、テクノロジーの力で医療現場の課題を解決できる製品が今後も開発されるであろう。