近年、集中豪雨による道路冠水や、都市部のヒートアイランド現象などが問題となっている。こうした問題を解決すべく、小松精練、トーケンらが産学連携で開発したのが「グリーンビズダム」というシステムだ。
グリーンビズダムとは
グリーンビズダムとは、耐候性に優れた保水セラミック「グリーンビズ」を基盤に植物を植生したものである。これらをビルの屋上などに設置することで街に緑を増やし、美しい景観を演出しつつゲリラ豪雨による冠水被害を減らすことができる。
アスファルトの道路に高層ビルが立ち並ぶ都会は、自然豊かな地域と比べて排水処理能力が低い。局地的な大雨や台風などが発生すると、マンホールから水が噴き出す、排水溝から水が逆流するなど、うまく機能しないケースも多い。こうした冠水被害は、電車の遅延や交通規制などを引き起こし、街の生活を大きく狂わせる。
都市の排水機能を補い、冠水を未然に防ぐ「グリーンビズダム」は、人々の暮らしを守る重大な役割を担うことになるだろう。
「ダム」の名にふさわしい高度な保水能力
実際に「グリーンビズダム」はどの程度の降水量に対応できるのか。
トーケンによる治水効果試験では、グリーンビズ基板1枚に対し10分あたり30mmという条件で降雨し、1㎡当たり12リットルの保水が可能であるという結果が出た。
10分あたり30mmということは、1時間当たり180mmの降水量となる。気象予報において「猛烈な雨」が1時間で80mmということからすると、現実には起こりえない降水量だと考えられる。また、たった1㎡の基盤で12リットルの水を給水できるため、ビルの屋上などに大量に設置すれば何トンもの保水が可能となる。
グリーンビズダムは、ゲリラ豪雨をはるかに超える条件下でも十分な保水効果を発揮する。実用化されれば、都市部の排水システムに大きく貢献することが期待されるだろう。
街を守る4つの機能
グリーンビズダムには、都市の環境問題を解決する4つの機能が備わっている。先述した保水機能と、蒸散機能、断熱機能、緑化機能だ。
グリーンビズは、保水した水分を蒸散することによって周囲の気温を下げることができる。すなわち、都市部のヒートアイランド現象を抑制する効果があるのだ。また、建物に設置したグリーンビズが外部からの熱を遮断するため、屋内のオフィスや住宅などの気温を保つことにもつながる。保水力の高いグリーンビズは植物の育成にも適しており、多様な植物を植えることでビルの景観を美しくし、都市部でも自然を感じることができる。
デザイン性に優れながらも、都市の冠水や気温上昇といったトラブルを防ぐグリーンビズダム。街の環境を様々な面からサポートするこの画期的なシステムは、今後ビル街に積極的に設置されていくことが期待される。