災害発生時、今まで自分たちが住んでいた街とは一変してまるで違う街にいるかのような錯覚に陥る。それもそうだろう。建物は崩壊し、地盤は崩れ、今まで通勤・通学等に使っていた道がなくなる。

そんな日常とは違った街で、被災者・要救助者を人手だけで救うことはかなり難しくなってくる。そこで近年、人が入ることが困難な場所であったり、人手でけではどうしても困難ながれきの山で役に立つような「レスキューロボット」が開発され続けている。SAIBO Techで以前紹介した「Quince」もそのうちの一つである。

今回紹介するのは京都大学・松野研究室が開発する「情報収集型レスキューロボット」である。

松野研究室

松野研究室HPより引用

京都大学にある松野研究室。この研究室では、制御・生物模倣・レスキュー・インターフェースについて研究している。目指す先は「メカトロニクス技術をベースに、人間の本質的理解と人間に役立つ機械システムの実現」。それを叶えていくために、様々なことを行っている。

レスキューロボットの開発もその目標を叶えるための一つである。

1995年の阪神淡路大震災の際、松野教授は神戸大学で助教授をしていました。その際、これまでの情報インフラが破壊され、情報の錯綜・混乱がおきました。また、阪神大震災の際には、瓦礫の下の被災者(要救助者)について、72時間以内に発見しなければ、その生存率が低かったという報告もあります。そこで本研究室では、特に被災地での情報収集を行う「情報収集型レスキューロボット」の開発に取り組んでいます。引用元:松野研究室HP

このように、「レスキューロボット」の研究は松野氏自身の実体験から始まったものだ。その強い志からか、文科省の大都市大震災軽減化特別プロジェクトやNEDOの戦略的先端ロボット要素技術開発プロジェクトに携わっている。

人命を救う「情報収集型ロボット」

松野研究室HPより引用(左上:KOHGA3、右上:KOHGA2、左下:KAMUI、下中央:HIEI、:右下:弟)

松野研究室では、いくつかの情報収集型ロボットを開発している。

KOHGA

松野研究室HPより引用

見た目がヘビのようなロボット「KOHGA」。もちろん、このような見た目には意味がある。KOHGAは、災害時のがれきの中にいる被災者の探索を目的として開発されたロボット。隙間への進入や障害物を乗り越えやすくするためにはこの形状が良かったのだとか。

加えて、後方のユニット(尾の部分)にカメラが取り付けられている。映像を撮るときは尾の部分を持ち上げて「サソリ形態」になることで、俯瞰的な映像を撮影できるらしい。まさにヘビとサソリを組み合わせたレスキューロボットなのだ。

FUMA

松野研究室HPより引用

小型自動車みたいな形状の「FUMA」。地下街など広範囲の環境にて高速に動き、情報収集を行うことを目的として開発されたロボットである。高速移動を実現するために車輪型になっており、また、40cm程度の段差を乗り越えるために本体後方にアームを有している。

加えて、このアームの先端についている魚眼レンズにより広範囲にわたって周りの状況を確認できる様になっている。素早く広範囲の映像を撮影するのに特化したロボットだ。

KOHGA2&KOHGA3

松野研究室HPより引用

戦車みたいな形状の「KOHGAシリーズ」。瓦礫が散乱したところで走ることができるように設計されたロボットである。そのため、整っていない道を走ることができるクローラが取り入れられている。

レスキュー分野を牽引していく京都大学・松野研究室。実際に開発だけをしているのではなく、被災地に足を運んで海中調査や被害情報の調査等も行っている。

最近、日本では地震や集中豪雨といった災害が起きている。人が立ち入ることが困難な災害にもすぐ対応できるレスキューロボットは、まさに人命を救うために必要不可欠なものとなってくる。松野研究室の活動は今後も追っていきたい。