地震や台風など、自然災害による建物の倒壊。もしその中で誰かが下敷きになっていたら、もし誰かが意識を保ちながら挟まれていたら。災害救助現場では、実際にそのような場面が発生している。しかし、生身の人間の力では瓦礫を撤去することも難しく、かつ大型機械による救助活動がスムーズに行えない場合も多い。そのような、人の手が必要とされる災害現場において活躍が期待されるのが、株式会社CYBERDYNEにより開発された、世界初のサイボーグ型ロボットスーツ「HAL」である。

人と機械と情報の融合、「HAL」とは?

NEDOHPより引用

「HAL (Hybrid Assistive Limb)」とは、「身体機能を改善・補助・拡張・再生することができる、世界初のサイボーグ型ロボット」のこと。身体に装着することで、「いつもより大きなチカラを出したり、さらに、脳・神経系への運動学習を促す」ことが可能となる。

人が身体を動かそうとするときには、脳からその動作に必要な信号が神経を通じて筋肉へ送られる。この信号の一部を読み取り、装着者が行おうとしている動作を「HAL」が認識することが可能となっている。読み取った動作に合わせて、複数あるパワーユニットをコントロールし、装着者の意志に沿った動きをアシスト。普段よりも大きなチカラを出すことで、今まで困難とされてきた作業が可能になる。

医療・介護福祉分野での身体動作支援、工場や建築現場などでの重作業支援、そして災害現場でのレスキュー活動支援など、様々な場面での装着が想定されている。

「動作のアシスト」から「動作の学習」へ


さらに、「HAL」の大きな特徴の一つが、動作に対しての正解を、脳にフィードバックをして学習させることができるというもの。

例えば、「HAL」を用いて「歩く」という動作が適切に行われたときにも、「歩けた」という感覚が脳へフィードバックされるのである。これにより、「歩くために必要な信号」というものを、脳が少しずつ学習していくことが可能となる。

人間の身体を動かすメカニズムは筋肉を動かすだけでは終わらず、実際に体がどういう信号でどのような動作を行ったのか、その確認までを脳が行う。「HAL」ではこのメカニズムを利用し、動作アシストから動作の学習までを可能にしている。

重作業アシストも!災害現場などへの応用への期待

今後の応用として、災害現場で倒壊した建物に閉じ込められたり、下敷きになったりした人を救助するために装着するなど、どうしても人間でしか解決できない現場での作業が期待されている。

また、様々な機能を有した新型の災害対策用としての研究・開発も進められている。福島第一原発の事故現場などでは、今までは考えられなかったような環境下での救助・復旧活動も発生し、作業員の安全や健康を確保することが重要な課題となっていた。

そこで、放射線を遮るための装備を施し被曝量を5割低減、クーリングシステムによる熱中症対策、生体モニタリングによる安全管理機能の実装など、特殊な環境下における活動をサポートするためのパワースーツの開発や実証実験が、今後も行われる予定だ。

 

過去、世界でも類を見ないような災害を経験してきた日本。その経験から、新たな技術の開発や応用が進んでいる。その中でも、人の手が必要な災害救助現場というのはなくならない。そんな災害現場をはじめ、様々な分野における「HAL」の展開が、今後も期待されている。

サイボーグ型ロボットスーツ「HAL」の詳細はこちら→株式会社CYBERDYNE公式ホームページ