日本に住むうえで、災害に備えるということは非常に重要である。しかし、実際に自分の住む地域で災害が発生した状況を想像することは難しい。今回はそういった問題を解決する、AR技術を利用した防災情報可視化アプリを紹介する。

VRとは違う、「拡張現実」ARとは

近年、ARという言葉を聞く機会が増えた。しかし、この言葉の意味を正しく知らない人もまだまだ多いだろう。そこで簡単に説明すると、ARはAugmented Realityの略称で「拡張現実」という意味がある。ちなみに似たような言葉でVRがあるが、こちらはVirtual Reality(仮想現実)のことである。

VRが仮想の世界をまるで現実であるかのように作り上げたものとすると、ARは現実にある世界に別の情報を加えて現実を「拡張」する。

ARを利用したサービスはさまざまだが、スマートフォンを利用するものが多い。星空にスマホをかざすと実際に星座の名前や形を確認できるように、アカデミックかつ趣味にも利用できそうなものもあるが、近年はAR技術が防災に役立てられることも多い。以前SAIBO TECHで紹介した、富士通の河川情報を収集するシステムもその1つだ。

ARを防災に役立てる!防災情報可視化アプリ

自然災害が頻繁に起こる日本において、防災は非常に重要なことである。そこで、日常生活から切り離すことのできないスマートフォンと、AR技術を利用して災害に備えようとするアプリが存在する。そういった、ARを利用し防災情報を可視化するアプリにおいて1番多いのは、カメラを通してみた現実の状況に、地震や津波、洪水が発生した際の被害状況を重ねてみることができるサービスだ。

以前SAIBO TECHの「東海地震対策に使える!?東海地方の防災アプリ3選」という記事の中で紹介した、「名古屋市地震情報アプリ」も、ARを利用した防災情報を提供している。このアプリでは画面の真ん中で上半分はカメラを通して実際の映像が、下半分には地図が表示される。そして地震や津波、河川の氾濫といった自然災害が起こった際の「被害想定状況」などが表示されるという仕組みだ。

いくら自然災害の発生件数が多い日本に住んでいるとはいえ、大きな災害を経験したことが無い人も多い。また、テレビ等のメディアを通して、災害が如何に危険なものかわかるし、備えも十分だと思う人もいるだろう。しかし、百聞は一見に如かずといいます。自分が現実に生きている地域が、自然災害に見舞われた際にどういった状況に陥るのか。そういった疑問を解決してくれるのが、AR技術を利用したアプリなのである。

ARを使ったアプリで災害に備える!

ARを利用したアプリは多数ある。今回は防災に活用することのできるアプリの中から2つをピックアップして紹介する。

1つ目は「AR津波ハザードマップ」だ。これは大阪府堺市の地域を対象として作られている。このアプリを利用すれば浸水範囲や深さといった津波情報と、避難所や避難経路避難情報を確認することができる。実際に自分がスマートフォンを通して見ている映像に災害発生時の仮想状況が表示されるため、災害が現実になった際の被害が想定し易くなる。さらにGPS機能をオフにすれば、現場に行かずともスマートフォン上の地図を動かすだけで、見たい場所の仮想被害情報を確認することが可能だ。


2つ目は、「ARハザードスコープLite」という東京23区を対象にしたアプリだ。こちらも、システムは「名古屋地震情報アプリ」や「AR津波ハザードマップ」とほとんど同じである。しかしこちらは地震や、建物の倒壊、火災といった災害の情報も確認することができるのが特徴だ。

ここで紹介した2つのアプリ以外にも、防災情報を可視化するARアプリは多数存在する。それぞれ、地域ごとに自治体などが提供しているものや、研究や実験に協力しているものなどさまざまだ。災害に備えるには、自分の生きる状況と災害の種類に合わせて考えることが重要だ。ARを利用したアプリを活用して、いざというときに自分の身を守る準備をしてほしい。

 

ARを利用した技術はこれからも増えていくと考えられる。その中でも、日常生活において欠かせないスマートフォンとアプリを使えば、防災もさらに身近になるだろう。今後も、防災情報を可視化したARアプリに要注目だ。